難聴によって認知症のリスクが高くなる!?

「難聴の影響」も認知症の危険因子に

 2017年7月、国際アルツハイマー病会議(AAIC)において、ランセット国際委員会が「難聴」は「高血圧」「肥満」「糖尿病」などとともに認知症の危険因子の一つに挙げられました。さらに2020年には、「予防可能な40%の12の要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がなされ、ますます難聴と認知症の関連が注目されています。ただし先天性難聴や一側性難聴はこの限りではありません。
 近年の国内外の研究によって、難聴のために、音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態にさらされてしまうと、脳の萎縮や、神経細胞の弱まりが進み、それが認知症の発症に大きく影響することが明らかになってきました。

 また、難聴のためにコミュニケーションがうまくいかなくなると、人との会話をつい避けるようになってしまいます。そうすると、次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的に孤立してしまう危険もあります。実はそれらもまた、認知症の危険因子として考えられています。だから、「難聴が最も大きな危険因子」だと言われているのです。

「よい聞こえ」が認知症予防につながる!?

 ただ、この事実は、難聴に対処することで認知症を予防できる可能性を示唆しています。
 つまり、補聴器をつけるなどして難聴に正しく対処し、適切な「聞こえ」を維持して脳を活性化し、さらに家族や友人とのコミュニケーションを楽しむことは、難聴の不便を抑えるだけでなく、認知症を予防したり、発症を遅らせる可能性が期待されています。
 聴力の低下を感じたら、決して放置せずなるべく早く対処しましょう。まずは医療機関で聴力検査を行い、難聴を早期に認識することが大切です。補聴器をつけることに抵抗を感じる人がいるかもしれませんが、「よい聞こえ」を取り戻すことは、QOL(Quality of life=生活の質)を高めるだけでなく、認知症予防にもつながる可能性があります。補聴器とはいつまでも若々しく健康的でいるためのいわばアンチエイジングツールなのです。

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