高齢者とのコミュニケーションに苦労していませんか?

 ご高齢の親御さんとお話しするときに、「耳が遠くなったなあ」と感じることはありませんか?
 何度も聞き返されたり、聞き間違いをされたりして、親とのコミュニケーションに苦労しているという方は非常に多いのではないかと思います。
 そういう親御さんとの円滑なコミュニケーションのためには、「耳が遠くなった」と感じる親御さんの「聞こえ」が今、どのような状態にあるのかをきちんと理解することが大切です。

「耳が遠くなる」とは、どんな状態なのでしょうか?

 高齢者の難聴は感音難聴が主体となっており、主な原因は、内耳にあって音を感知する有毛細胞が年齢とともに減少することです。
 その結果、高音域を感知する力や音の微妙な周波数の違いを聞き分ける力が低下し、脳に届けられる「音の情報」が少なくなるせいで、言葉の内容を認識するのに時間がかかるようになってしまいます。
 言われたことがすぐに理解できなかったり、聞き間違いをしてしまったり、あるいは、早口の話についていけなくなったりするのはそのためなのです。
 また、単純に聞こえる音のボリュームが下がっていると誤解しがちですが、小さい音は聞こえづらくても、大きい音はより大きく聞こえるので、必要以上の大きな声は若い人以上にうるさく感じてしまいます。

基本はゆっくり、はっきり話すこと

 このような特徴を踏まえた上で、円滑なコミュニケーションの方法について考えてみましょう。
 まず、声の大きさですが、闇雲に大きな声で話すのは逆効果。普通よりやや大きいくらいの声を意識してください。
 また、ゆっくりはっきり話すことが大切です。
 カ行、サ行、タ行は聞き間違えやすいので言葉の始まりは特にしっかり発音するようにしましょう。また、例えば、佐藤さん/加藤さん、須藤さん/工藤さんなどの聞き間違えはどうしても起こってしまいますから、聴覚だけに頼らず、大事な用件は紙に書いたりして視覚情報と合わせて伝える習慣を持つのも良い方法だと思います。

 「老い」というのは、本人だけでなく、家族も受け入れ難いものかもしれません。加齢に伴う難聴の特徴を理解し、相手の立場に立って接することで、高齢の方との会話はもっと楽しいものになるでしょう。
 また、難聴を自覚しているのに、補聴器をつけることに抵抗がある方もいるかもしれません。けれども補聴のケアが遅れると生活の質が悪化し、認知症発症のリスクも高めます。本人または周囲の人に「聞こえにくい」自覚があれば、早めに耳鼻咽喉科専門医のアドバイスを受けることがとても大切なことです。

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