私も補聴器でQOLを向上させました!【患者様インタビュー】

 今回お話を伺ったのは、栃木県に住む、内藤美江さん(79歳/仮名)です。今でこそ、補聴器によるQOL(生活の質)の向上を実感されている内藤さんですが、実は苦い経験もお持ちなのだそう。いったい何があったのでしょうか?

補聴器をつけてみたものの、不適切なトレーニングで一度は挫折……

———聞こえに不安を感じ始めたのはいつ頃ですか?
今から4年ほど前、75歳を過ぎた頃ですね。ある有名人の講演会を聴きに行ったのですが、お話の内容がうまく聞き取れなかったんです。いつの間にこんなに聴力が衰えていたんだろうと、とてもショックを受けました。

———それまでは日常生活で不便を感じることはなかったのですか?
 私はあまり外出もしませんし、一緒に暮らしている夫や息子とはたいした会話もしないので(笑)、自分の耳が悪くなっているという実感はなかったんですよ。テレビの音が以前より聞き取りにくくなったなあとは感じることはありましたが、年だから仕方ないわとあまり深く考えていませんでした。

———病院を受診したのは、その講演会での出来事がきっかけですか?
 実はその頃からひどい耳鳴りにも悩まされるようになったので、思い切って病院に行ってみたんです。そこで、補聴器をつけることを勧められて、紹介されたお店で補聴器を買いました。補聴器をつけることには特に抵抗はなかったですよ。これをつければすぐにちゃんと聞こえるようになるんだと思い込んでいたので……。

———でも、思っていたのと全く違っていたのですね、
 そうなんです。いざ補聴器をつけてみると、もううるさくてうるさくて! それでまた補聴器屋さんに行って「うるさくて耐えられない」と話したら、ボリュームを下げてくれたのですが、それでもうるさいから、自分で勝手にボリュームを下げたりもしていました。それでも我慢できずに外してしまうことも多く、1日のうちでつけている時間の方が短かったかもしれません。耳鳴りも収まらないから、二重の苦しみだったんです。友人に話すと、補聴器が合わなくてやめたという人が多かったので、きっと私も合わないんだと思って、結局つけるのをやめてしまいました。

最悪の状態を経て、再び補聴器をつけることに。
主治医の励ましで辛い時期を乗り越えました。

———補聴器をつけなくなってから耳の状態はどうなりましたか?
 うるさいことからは解放されましたが、耳鳴りはひどくなるばかり。聞こえもどんどん悪くなって、娘と電話で話すのもままならなくなりました。そんな時に久しぶりに昔の友人たちとの会合があったのですが、みんなが楽しそうにおしゃべりしているのに、私は話の内容が全然聞き取れないんです。悲しくなってずっと下を向いていました。そうするうちにだんだん人と会うのも億劫になって、どんどん気持ちは落ち込み、1日中耳鳴りにも苦しめられて、もうそれから3年くらいは辛いばっかりの毎日でした。

———それは本当に辛かったですね。それで、再び補聴器をつけ始めたのですか?
 一番はとにかく耳鳴りを治して欲しくて、良い先生がいると娘から教えてもらった病院の耳鼻咽喉科を初めて受診したんです。そこで、補聴器相談医の先生に耳鳴りを起こす脳の無駄な活動を抑えるためには、補聴器を使ってきちんと音を脳に送らなくてはいけないと言われました。また補聴器をつけることに不安がないわけではなかったのですが、難聴が耳鳴りの原因になっていることを先生がとてもわかりやすく説明してくださったので、今度こそ頑張ろうって思ったんです。そこでは聴力検査だけでなく、補聴器をつけたときの聞こえ方まで丁寧に検査してくださったので、この補聴器が自分に合わないはずはないという安心感もありましたね。

——2度目の補聴器はどうでしたか?
 正直言ってやはり最初は辛かったです。3年前よりも難聴が進んでいたせいもあるのかもしれないですが、「うるさい」という感覚は前回よりひどかったかもしれません。家の前の道路を車が通るたびに、機関車が来てるのではないかと思うくらいでした。でも、週に1回の定期検診のたびに「今は辛いと思うけど、きちんと音を送って、難聴の脳を変えるために頑張りましょう」と励ましていただいて、寝るときとお風呂に入るとき以外はずっとつけていましたね。先生がおっしゃっていた通り、徐々にうるさいのにも慣れてきて、2ヶ月くらい経つと補聴器をつけることが苦痛ではなくなってきました。

3ヶ月のトレーニングで聞こえが驚くほど改善。
耳鳴りも落ち着き、今の状態は夢のようです。

——2度目の補聴器をつけ始めて、今、3ヶ月が過ぎたところだそうですが、調子はどうですか?
 少しずつ、電話の声が聞きやすくなってきていることは感じていたのですが、今、ここでこんなにスムーズに会話が楽しめていることに自分でも驚いています。相変わらず家で夫や息子とたくさんおしゃべりすることがないから、気づきませんでした(笑)。ほんの数ヶ月前まで、なんとか聞こえる左耳側にいる人とだけかろうじて会話ができるかなという感じだったんですよ。

———もう生活に支障はなさそうですね。
 もちろん、今でも遠くの人の声は聞こえにくいということはあります。でも、毎日が辛くてたまらなかった3ヶ月前を思えば、今の状態は夢のようです。これなら、また友人たちとおしゃべりを楽しむことができるような気がします。なんだか自信がわいてきました。

———今はもう補聴器をつけていてうるさいということはないですか?
 そうですね、うるさいと思うことはないです。音があるのが当たり前になったのかもしれません。先生からは「しばらく忘れていただけで、昔はそういう音を聞いていたんですよ」と言われました(笑)。脳が以前の状態に戻ってきていると言われて嬉しいです。

———耳鳴りはどうですか?
 うるさい音に慣れよう慣れようと、そっちに気を取られているうちに、いつの間にか気にならなくなっていました。今日、このインタビューを受けるまで、耳鳴りのことはすっかり忘れていましたよ(笑)。

——聞こえが改善されて、これからやってみたいことはありますか?
 私は映画を見るのが好きだったんです。でも聞こえが悪くなってから、映画館から足が遠のいてしまい、もう長いこと行っていません。広い場所だと音が反響して聞きづらいんです。でも、また大きなスクリーンで映画を見てみたいですねえ。

———最初の辛い時期をしっかり乗り切られたわけですし、補聴器という心強いパートナーとともに、これからいろいろなことを楽しめそうですね。今日は本当にありがとうございました。


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