WHOの騒音に関する新たなガイドライン  ―「レジャー騒音」対策が重要

 2018年10月、WHO(世界保健機構)欧州支部は、人々の健康を環境騒音から守るための新たなガイドラインを打ち出しました。
 難聴や耳鳴りは、騒音がもたらす深刻な健康被害の一つであり、大きな音になればなるほど、聴く時間が短くても難聴になるリスクが高まるため、WHOではこれまでも、1日あたりの音圧レベルの許容基準を定めていました。  
 新たなガイドラインでは、環境騒音調査の結果を多角的に精査した上で、道路交通や鉄道、航空機などの交通騒音だけでなく、「レジャー騒音」に対してもきめ細かい推奨条項を設けています。

難聴のリスクを高める「レジャー騒音」とは?

 ここでいうレジャー騒音(ノイズ)とは、人々が様々なレジャー活動に参加することでさらされるノイズのことです。例えば、ナイトクラブやパブに行ったり、フィットネスクラスに参加する、あるいはスポーツを観戦したりコンサート・ライブ音楽を楽しむとき、更に一人で音響機器を使って音楽を聴くとき、などです。難聴のリスクについて言及されているのが、まさにその「レジャー騒音」です。
 子どもと大人の難聴の増加のリスク回避のためには、この「レジャー騒音」において70デシベル(dB)という基準を設け、そのレベルを超えないための措置を講ずることを、今回のガイドラインでは強く推奨しています。
 70dBというと1mの距離の相手となんとか会話ができるレベルの騒音です。つまり、隣の人の声が確認できないほどの大音量にさらされると、難聴のリスクが高まるとWHOは結論づけているというわけなのです。

日本でも急がれる「レジャー騒音」対策

 ロンドンのクイーンメアリー大学の心理学名誉教授であり、ガイドライン作成グループの委員長でもあるスティーブン・スタンスフェルド氏によれば、このガイドラインの目標は、騒音の悪影響から地域社会を守る公衆衛生政策を支援すること。そのため、ガイドライン値以上のレベルにさらされている人のために国や地方自治体などが適切な騒音軽減の措置をとることが合わせて推奨されているのです。
 今回のガイドラインはWHO欧州地域における政策立案において採用されることを意図しているものですが、その一方で「他の地域および世界的にも適用できる」ことも表明されています。
 WHO欧州地域事務局長のジュジャンナ・ヤカブ氏も語っているように「騒音は健康に及ぼす主な環境リスクの一つ」であることは間違いありません。
 もちろん、わが国においてもさまざまな騒音対策は講じられていますが、工場・事業場や建築作業にかかる騒音、自動車、および深夜騒音などに留まっているのが現状です。
 私たちや子どもたちの健康、とりわけ耳の健康を守るためには、身近な「レジャー騒音」に対してもっと多くの人々が強い関心と正確な知識を持ち、予防も含めた適切な対策をそれぞれの立場で検討していくことが必要と言えるでしょう。

【参考文献】:ENVIRONMENTAL NOISE GUIDELINES for the European Region
【参考文献】:Noise pollution: WHO sets limits on exposure to minimise adverse health effects

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