一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

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医学生・研修医の皆さん

理事長からのメッセージ

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 理事長 	森山  寛

 医学・医療の進歩は目覚ましいものがあります。そして高度化、専門化が進むとともに医学生・研修医・専攻医の時代に学ぶべき内容も、従来以上に幅広く膨大なものとなっています。一方で医療現場は複雑化し、少子高齢社会や情報化社会の到来によって国民の求める医療ニーズは多様化し、要求するレベルも高くなっています。
 耳鼻咽喉科は、五感のうち聴覚・嗅覚・味覚や言語など人間社会の発展や文化の形成に重要な臓器を扱う学問・診療領域であり、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学(Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery:ORLHNSあるいは簡略化された形ではEar Nose and Throat:ENT)と呼称されております。
 耳鼻咽喉科の魅力の一つは、多岐にわたる疾患が経験できるなどの多様性にあります。すなわち平衡障害、聴覚障害、中耳疾患あるいは顔面神経障害を担当する耳科領域。副鼻腔の炎症や腫瘍、アレルギー、顔面外傷などを担う鼻科領域。舌・口腔・咽頭疾患や睡眠時無呼吸を扱う咽頭領域。音声や嚥下に関係する喉頭領域。そして頸部の良性・悪性腫、甲状腺腫瘍や唾液腺腫瘍を扱う頭頸部腫瘍領域など、多岐に富んでいます。解剖学的には狭い範囲でありますが、疾患も多く疾患頻度も高く実際の診療は幅広いものとなっています。また年齢的にも幼小児から高齢者まで広く診療をする科であり、診断から保存・手術的治療まで一貫して関与でき、外科系でもありますが内科的な側面もあります。さらに手術的な治療の多くは、機能再建外科となっています。
 耳鼻咽喉科学という学問・診療体系は日本で生まれたと言っても過言ではありません。19世紀後半のヨーロッパ(欧州)においては、耳科、鼻・咽頭科そして喉頭科という3つ独立した科がありましたが、まとまった耳鼻咽喉科という診療科や学問体系はありませんでした。一方、同じ19世紀後半の明治初期の日本でも、中耳炎は非常に多く、中耳炎から髄膜炎になって死亡する耳性の頭蓋内合併症も多数見られておりました。抗生剤の無い時代に中耳炎に対する唯一の治療が手術であったことから耳科疾患は外科で、一方、鼻・咽頭科疾患、喉頭科疾患はジフテリアなどに起因することも多かったために内科が診療・教育を担当しておりました。1890年(明治23年)に欧州の留学から帰った賀古鶴所は日本赤十字病院にて初めて耳鼻咽喉科の診療を開始し、さらに1892年(明治25年)に同じく欧州留学を終えた金杉英五郎(本学会の初代の会頭)がこれら3つの診療科を一つにまとめ、世界に先駆けて耳鼻咽喉科学という学問体系を作り、講義を開始するととともに学会を設立し学術誌の発刊を行ったわけであります。すなわち日本において耳鼻咽喉科学が誕生し、今年で124年の長い歴史を持ちます。
 本学会の研修プログラムは、質の高いより実践的で優れた臨床力を持つ専門医育成を目的とし、各研修病院は、基幹病院を中心として優れた研修プログラムを組んでいます。そのプログラムに沿って4年間の研修を修了することにより、実践的な臨床力が身につきます。大学附属病院では基本的な診療とともに、高度・先進医療を経験し、また地域に密着した一般病院ではcommon diseasesにふれながらの一般診療を経験することにより、相互に補完しあいながら幅広い耳鼻咽喉科の研修がなされる仕組みになっております。
 皆さんのこれからの進路は多様です。病院勤務や診療所など臨床医として患者さんを診るほか、研究者として医学を探求していく道、医療制度改革に携わるために医療行政へ進む道、また臨床医となっても大学や附属病院において診療、教育、研究を続ける道など、そのキャリアパスは様々です。ぜひ耳鼻咽喉科を志望し、研鑽を積んで、世界に冠たる日本の耳鼻咽喉・頭頸部外科学の医学・医療の将来を自ら背負っていただきたいと願っています。