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小児人工内耳適応基準
 


 本適応基準では、言語習得期前および言語習得期の聴覚障害児を対象とする。

I.人工内耳適応条件
 小児の人工内耳では、手術前から術後の療育に至るまで、家族および医療施設内外の専門職種との一貫した協力体制がとれていることを前提条件とする。
 1.医療機関における必要事項
  A) 乳幼児の聴覚障害について熟知し、その聴力検査、補聴器適合について熟練していること。
  B) 地域における療育の状況、特にコミュニケーション指導法などについて把握していること。
  C) 言語発達全般および難聴との鑑別に必要な他疾患に関する知識を有していること。
 2.療育機関に関する必要事項
  聴覚を主体として療育を行う機関との連携が確保されていること。
 3.家族からの支援
  幼児期からの人工内耳の装用には長期にわたる支援が必要であり、継続的な家族の協力が見込まれること。
 4.適応に関する見解
  IIに示す医学的条件を満たし、人工内耳実施の判断について当事者(家族および本人)、医師、療育担当者の意見が一致していること。

II.医学的条件
 1.手術年齢
  A)

適応年齢は原則1歳6カ月以上とする。年齢の上限は定めず、上記適応条件を満たした上で、症例によって適切な手術時期を決定する。
  B) 髄膜炎後蝸牛閉塞など、1歳6カ月未満での手術を要する場合がある。
  C)

言語習得期以後の失聴例では、補聴器の効果が十分でない高度難聴であることが確認された後には、獲得した言語を保持し失わないために早期に人工内耳を検討することが望ましい。
 2.聴力、補聴効果と療育
  A) 種々の聴力検査を用いても両耳とも平均聴力レベル90dB以上である場合。
  B)

少なくとも6カ月以上にわたる最適な補聴と療育によっても両耳とも平均補聴レベルが話声レベルを超えず、補聴器のみでは音声言語の獲得が不十分と予想される場合。
 3.禁忌
  中耳炎などの感染症の活動期
 4.慎重な適応判断が必要なもの
  A) 画像診断で蝸牛に人工内耳が挿入できる部位が確認できない場合。
  B) 反復性の急性中耳炎が存在する場合。
  C) 制御困難な髄液の噴出が見込まれる場合など、高度な内耳奇形を伴う場合。
  D)

重複障害および中枢性聴覚障害では慎重な判断が求められ、人工内耳による聴覚補償が有効であるとする予測がなければならない。