口内炎、口の中の違和感、お悩みの方は耳鼻咽喉科へ

治療後のリハビリテーションとはどのようなものですか?

治療後のリハビリテーションとはどのようなものですか?

リハビリテーションは治療前からが理想的

手術後に食事や会話といった生活機能に障害が起こり得る口腔がんの場合、術後の訓練や食事の工夫、生活の援助は絶対に欠かすことができません。
具体的な治療内容(放射線治療や薬物療法の内容、手術の場合は切除の範囲や場所)、年齢などによって、障害の現れ方はさまざまなので、それに応じた的確なリハビリテーション計画が立てられます。ただ、治療を終えて安堵する一方、術後の痛みや、しゃべれない、食べられないというショックと不安のなかで嚥下訓練を開始することになる患者さんは決して珍しくありません。
そのような心のケアという観点からだけでなく、その効果をより高めるためにも嚥下訓練は手術前から開始するのが理想的です。実際、治療の2週間前から嚥下訓練を開始することが嚥下機能の回復に有効であるという調査結果も出ています。

摂食嚥下の訓練では「舌の動き」、「のどの力」、「呼吸の力」をよくする訓練が言語聴覚士や看護師とともに行われます。

嚥下おでこ体操、シャキア法

食べ物を飲み込むときにはのどぼとけが前上方に動いて、むせずに食べ物を通過させる働きをします。口腔がんの治療を受けた患者さんではこの動きを行う「舌骨上筋」の動きが手術や放射線治療でわるくなる方が多く、この働きを訓練するために、頭を前にまげて手とおしくらまんじゅうする「嚥下おでこ体操」や、寝て頭をあげる「シャキア運動」が行われます。

ブローイング

口腔がんの治療後の患者さんではとくに、言葉を話すことや誤嚥した食べ物を吐き出すときに、呼吸の力が重要です。ペットボトルなどに水をいれて、ストローで吹く、「ブローイング訓練」は呼吸の力のリハビリテーションになるとともに、鼻とのどの間を閉める筋肉を鍛える効果もあり、勧められます。

舌の運動訓練

口腔がんの治療後の患者さんでは、手術で舌が部分的になくなったり、皮弁に置きかえられたり、また放射線治療で舌の筋肉が固くなるなど、舌の運動がわるくなります。そのため、のこされた舌の運動機能を十分に使えるように、舌の運動訓練が重要になります。

リハビリテーションはワンチームで

口腔がんの手術によって起こる機能障害は、術前にある程度予測することも可能なので、担当医とリハビリテーション科医や言語聴覚士、そして看護師が早期から連携することで、リハビリテーションの効果を高めることができます。また、特に摂食嚥下機能(食べ物を飲み込むこと)の低下は、生命維持にも関わりますので、栄養支援も含めた対応が必要です。口から食事をとりはじめた後も、咀嚼(そしゃく)機能や嚥下機能の回復度合いに応じた食事内容の指導も欠かせません。痛みの管理や粘膜炎の解消のためには薬剤師の協力が求められますし、口腔衛生管理のためには歯科医のサポートも大切です。
つまり、口腔がん治療におけるリハビリテーションは、頭頸部外科専門医である耳鼻咽喉科医の統括のもと、さまざまな分野の専門家が「ワンチーム」となって行われるよう努めています。それでこそ、生活の質の急激な低下という不安の中にいる患者さんの心にも寄り添った、真の意味でのリハビリテーションが実現するのです。