- 2024年08月28日
- アレルゲン免疫療法-基礎と臨床-
大久保 公裕(日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部感覚器科学分野)- アレルゲン免疫療法はアレルギー性鼻炎の根本的治療法としてのエビデンスがあり、皮下免疫療法(SCIT)から舌下免疫療法(SLIT)への進化を遂げている
- その効果発現メカニズムはSCIT、SLITとも現在までの検討では一部が抗体産生の調整機構、上皮細胞のマスト細胞の減少を介していると考えられる
- 現在、SLITはスギ、ダニのべ50万人への投与が行われ、現在もそれを望む患者人口は増加して、更なる広がりを見せている
- 2024年07月12日
- 持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)-基礎と臨床-
堀井 新(新潟大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)- PPPDは慢性めまいの原因として最多で、これまで原因不明のめまい症とされてきた症例の約70%を占める
- 本研究では、PPPDの国際診断基準の策定、疫学調査、病態の解明、既存治療の検証、新規治療法の提案を行った
- PPPDは全めまいの約10%を占め、女性に多く平均年齢は49歳であった。中枢神経系における感覚再重み付けによる、バランス保持の視覚・体性感覚過敏が病態であった。新規抗うつ薬および認知行動療法に一定の有効性を認めた。病態に則した新規治療として、感覚過敏を改善させる感覚代行治療を提案した
- 2023年08月15日
- 中耳真珠腫の病態解明と粘膜再生による新たな治療戦略
小島 博己(東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室)- 再発防止のために、術後に粘膜を再生させ理想的な含気を維持した中耳腔を形成することを可能にする自己由来鼻腔粘膜細胞シート移植による中耳粘膜再生治療を開発した
- 真珠腫成因として、エピジェネティクス変化が一端を担っていることが明らかにされ、中耳真珠腫の構成細胞として新しくp75 陽性神経堤由来細胞を同定し、新規保存的治療法の可能性が見出した
- 得られた研究成果を社会実装していくための大学発ベンチャー企業を設立した
- 2023年06月15日
- 上気道炎症の病態と制御-臨床における疑問に挑む
清水 猛史(滋賀医科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)- 好酸球性鼻副鼻腔炎の病態を解明し、新たな局所治療薬の可能性を見出した
- 舌下免疫療法の作用機序を解明し、改良・発展のための基盤を構築した
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における嗅覚障害の発症機序を解明し、14員環マクロライド系抗菌薬を用いた新たな治療法の可能性を明らかにした
- 2022年08月26日
- 咽喉頭癌の経口的手術と反回神経の再生医療
塩谷 彰浩(防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学講座)- 頸部外切開や気管切開が不要な咽喉頭癌に対する低侵襲手術として、経口的咽喉頭部分切除術:TOVS(Transoral Videolaryngoscopic Surgery)を新規に開発した
- TOVSの治療成績、術後機能は良好で、頭頸部癌診療ガイドラインに収載され、早期下咽頭癌の標準治療になった
- 反回神経麻痺における声帯再運動化を目指した、遺伝子治療・分子治療開発のための研究を行い、過誤神経支配等の神経学的問題解決の糸口がつかめた
- 2022年06月29日
- 側頭骨・中頭蓋底疾患の病態と治療
中川 尚志(九州大学 耳鼻咽喉科 教授)- 耳かきは外耳がんの発がんの原因となる
- 外耳がんの次世代シーケンサーとスーパーコンピューターを用いたマルチオミックス解析で、がん遺伝子の蓄積で段階的にがんが進行するのではなく、YAP1などの転写因子が発がん、高い悪性度である浸潤性の特性の獲得に関わっていることを解明した
- 微小解剖の知識を身につけ、ナビゲーションシステムを併用することで、外側頭蓋底外科手術を安全かつ確実に行うことが可能となる
- 耳下腺腫瘍の臨床―体系的な診断・治療から得た新知見と将来展望―
河田 了(大阪医科薬科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)- 良性耳下腺腫瘍に対する術後一時的顔面神経麻痺の頻度は19.5%であり、6か月で90%、12か月で100%が回復した
- 耳下腺腫瘍に対する細胞診分類に、悪性度や組織型を含む分類を考案した
- 耳下腺癌の予後因子は組織学的悪性度とステージであり、高悪性癌やステージIVの5年生存率は約50%であった
- 2021年11月12日
- 急性感音難聴診療の新展開
佐藤 宏昭(岩手医科大学 耳鼻咽喉科 教授)- 7T-MRIにより突発性難聴では、迷路動脈の閉塞は無いことが明らかとなった
- 突発性難聴非治癒例に対する補聴器の早期装用開始は自覚的評価も高く、特に雑音下での語音聴取を改善する
- Off-frequencyノイズオージオメトリは聴覚求心路障害を検出できる可能性がある
林 隆一(国立がん研究センター東病院 副院長)- 喉頭機能温存手術の適応拡大には早期発見・早期治療が必要であり、消化器科と耳鼻咽喉科・頭頸部外科との緊密な診療体制の構築が求められる
- AIを活用した診断や経口的手術、ロボット支援下手術、イルミノックス治療など新規技術の積極的な開発と臨床導入
- 従来行われてきた喉頭機能温存手術の後進への伝承
- 2021年07月14日
- 新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害の機序と疫学、予後の解明に資する研究
- 2021年01月18日
- 「超高齢社会における嚥下障害―病態と機能評価に基づく治療戦略―」
兵頭 政光(高知大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授)- 嚥下障害患者は口から食べる喜びを奪われ、誤嚥性肺炎による死亡にも直面する
- 嚥下機能を簡便かつ客観的に評価する嚥下内視鏡検査スコア評価法を開発した
- 高度の嚥下障害に対する外科的治療法は、経口摂取の回復と誤嚥性肺炎の防止に有用である
- 「前庭代償と平衡訓練―基礎から臨床への展開―」
武田 憲昭(徳島大学 耳鼻咽喉科 教授)- めまいの発症機序である空間識障害の脳内メカニズムを解明した
- ヒスタミンH3受容体拮抗薬がめまいの回復を促進し、H1受容体拮抗薬がめまいに伴う嘔吐を抑制することを解明した
- VRやウェアラブル・デバイスを用いた新しいめまいのリハビリテーションを開発した
- 「好酸球性副鼻腔炎の病態解明と新たな治療戦略」
藤枝 重治(福井大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授)- 厄介な蓄膿症:好酸球性副鼻腔炎とはなんだ
- 最新の次世代シークエンサーで好酸球性副鼻腔炎の病態を探る
- 好酸球性副鼻腔炎患者の鼻腔で検出される菌を同定した
- 「内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS )の進歩と将来展望」
春名 眞一(獨協医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科 教授)- ESSは鼻副鼻腔を明るく死角のない術野で的確な手技を行え、治療効果を飛躍的に向上させ世界的な標準術式である
- マイクロデブリッダーやナビゲーションシステムなどの支援機器の開発とともに適応疾患が拡大し、経鼻内視鏡下に頭蓋底手術も可能になっている
- 今後、ロボット、AIおよび3次元画像の導入でさらに安全で精緻な手術技量の向上が期待できる
- 「聴力改善への挑戦―手術と聴覚管理の融合―」
東野 哲也(宮崎大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科 教授)- 耳鼻咽喉科における難聴治療の基本は伝音再建手術、補聴器、両者の組み合わせである
- それでも聴力改善が乏しい難聴者には各種人工聴覚器医療(人工内耳、人工中耳、骨導インプラント)の適応を評価する
- 様々な難聴病態に対し適切な治療法を選択し、聴覚管理を継続するためにも言語聴覚士や臨床検査技師など多職種からなるチーム医療構築の重要性を強調した
Last update: 2024年8月28日