若者たちの耳が危ない! 世界で11億人もの若者が難聴のリスクを背負っている

 スマートフォンなどの普及により、いつでも気軽に音楽を楽しめるようになりました。その一方でヘッドホンやイヤホンの使用によって聞こえにくくなる、ヘッドホン・イヤホン難聴(医学的には音響性聴器障害または騒音性難聴)が大きな問題となっています。2019年、WHO(世界保健機関)の発表によると、音楽プレイヤーやスマートフォンを危険な音量で使用したり、クラブやライブイベントなどで大音量にさらされていることによって、若者を中心に世界で11億人が難聴のリスクにさらされていると警鐘を鳴らしています。

「大音量で音楽」のツケは想像以上に深刻

 大音量で音楽を聴くことがなぜ、難聴のリスクを高めるのでしょうか?
 私たちが音を感じるためには、内耳の中の「有毛細胞」の先端にある「聴毛」が音の振動をキャッチし、それを電気信号に変換して、脳に伝達する、という一連の流れが必要です。

「聞こえのしくみ」

 ところが、この聴毛は非常に繊細なので、大きな音=大きな振動に長時間さらされることによって、抜け落ちたり、傷ついたりすることがあります。そうすると、音の振動をキャッチできなくなり、その結果音が聞こえなくなるのです。これは騒音や強大音により難聴が生じたもので、その原因によって「ヘッドホン難聴」「イヤホン難聴」「ロック難聴」とも呼ばれます。
 その結果、両耳の聞こえが低下するだけでなく、人によっては、耳鳴りなどの症状があらわれる場合もあります。
 また、一度傷ついた聴毛や有毛細胞が再生することはありません。
 つまり、失われた聴力を完全に回復させることはほぼ不可能で、大音量で音楽を聴き続けたツケは本人が想像しているよりはるかに深刻です。

若い世代を難聴リスクから守るために

 「ヘッドホン・イヤホン難聴」や将来の難聴リスクから守るには、何より「大音量」にさらされる機会を減らすことが大切です。
 ヘッドホンやイヤホンで音楽を楽しむ時の音量には細心の注意を払うようにしましょう。
 例えば、ヘッドホン・イヤホンをしたままでも会話が聞き取れるくらいの音量なら、ほぼリスクがないと言われる65dB程度。ヘッドホン・イヤホンの最大出力は100-120dBくらいですから、60%以下の音量に設定するとよいでしょう。ノイズキャンセリングという機能がついたヘッドホン・イヤホンなら周りの騒音を抑えてくれるので、より小さな音量で楽しむことができます。

 また、ヘッドホン・イヤホンで音楽を聴いたら、耳に休息を与える習慣を持つことも、ぜひ心がけてください。
 ヘッドホン・イヤホン難聴は重症化すると完治が難しくなってしまいます。そうなる前に少しでも耳に異常を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診すること。早期であれば、投薬治療などで治る可能性も高くなります。

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