耳垢をほっておくと、認知症のリスクを高める!?

溜まった耳垢で聴力が低下する

 耳垢が過剰に溜まった状態を「耳垢栓塞(じこうせんそく)」と言います。文字通り、耳垢が栓のように詰まった状態で、耳の小さい子どものほか、耳垢を排出する力が弱くなった高齢者に多く見られる症状です。
 言わば、耳垢で耳栓をしているようなものですから、当然ながら「聞こえ」にも影響します。鼓膜が観察できないくらい耳垢が溜まっている人は、そうでない人に比べ、平均7dBも聴力が低いという調査結果もあります。7dBとは、正常な聴力があれば、誰もが大きさの違いを感じるレベルです。
 しかも、難聴は認知症の危険因子のひとつ(「難聴は認知症の最大の原因になる!?」)。実際、先の調査でも、耳垢がある人は認知機能が低い傾向があることがわかっており、アメリカの高齢者向け施設での調査では、耳垢栓塞を取ることで入所者の聴力が改善しただけでなく、認知機能も改善されたことも報告されています。

奥に溜まった耳垢は自分で取らないで!

 耳垢は、溜まりすぎると確かに難聴の原因にもなりますが、その一方で、細菌に対する防御機能や皮膚表面を保護する作用などがあると言われています。外耳道には耳垢を外へ押し出す自浄作用もありますから、その力が弱まる高齢者であっても、耳掃除は2週間〜1ヶ月くらいの頻度で十分です。
 その際も耳垢を掻き出すのではなく、外耳道の入り口から1cm以内の見える範囲の耳垢を綿棒でそっと拭き取る程度にとどめましょう。硬い耳かきを奥まで入れるのは、思わぬ怪我にもつながりとても危険です。耳垢が溜まりやすかったり、奥に溜まった耳垢が気になる場合は、耳鼻咽喉科で取ってもらうほうが安心です。また、耳垢栓塞に気づかぬまま放置することのないよう、1年に1度は耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

【参考文献】: 高齢者の耳垢の頻度と認知機能、聴力との関連.(日本老年医学会雑誌(2012)49(3)pp325-329.)

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