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口の中にできるがん「口腔がん」の治療

口内を見る女性

首から上の、脳と目を除いた部位にできるがん、頭頸部がんのうち最も多いのが、口の中にできる口腔がんです。頭頸部がん全体の26.9%を占めます。国内では、口腔がん患者の数が増加傾向にあります。

口腔がんとは

口腔がんは、舌にできる舌がん、舌と歯茎のくぼみにできる口腔底がん、頬の内側の粘膜にできる頬粘膜(きょうねんまく)がん、そして歯茎にできる上歯肉がんと下歯肉がんがあります。舌がんが約半数の54.2%と最も多く(*1)、その他はまれながんです。口内炎のような状態が続く、しこりができる、痛みや出血があるといった症状が出ます。また、早期であっても首のリンパ節に転移していることがあり、そこに、しこりや腫れが生じることもあります。早期の段階では、口内炎や歯肉炎(歯周病)などと診断されてしまい、がんが進行してから見つかるケースも多いのが実情です。岐阜大学の小川武則教授のデータによると、2019年に口腔がんの診断を受けた計3990人のうち49%に当たる2014人がステージ3、4の進行がんでした(*2)。
*1,*2:日本頭頸部癌学会による全国悪性腫瘍癌登録 報告書(2019)より

口腔がんの治療

標準治療は手術です。日本の『頭頸部癌診療ガイドライン(2022年版)』にも、米国の『NCCNガイドライン』にも、第一選択は手術であることが明記されています。ただ、手術をすると、話すことや食べること、味覚に障害が出たり、容貌が変わってしまったりすることがあります。こういった機能障害を避けるため、手術を希望しない患者さんもいます。その場合は、早期の小さながんで転移が認められなければ、放射線治療を選択することがあります。外部から放射線を照射する方法と、放射線を出す物質を直接がんに埋め込んでがん細胞を殺傷する小線源治療が行われています。また、進行がんの場合は、手術に加え、抗がん剤と放射線治療を組み合わせます。

口腔がんの新たな治療法

口腔がんの治療は進化を続けており、さまざまな新しい治療法が開発されています。手術で切除した部分を修復する再建手術では、コンピューターと3Dプリンターを活用して、話したり食べたりする機能や容貌を術前に近い状態に戻すことが可能になってきています。そのほか、がんに効率よく放射線を当てて副作用を軽減できる放射線治療、がん細胞のみを狙って攻撃する分子標的薬や免疫の力を使ってがん細胞を攻撃する免疫チェックポイント阻害薬などを使った薬物療法の研究も進められています。また、治療後に重要となる、飲み込みや発声、首の運動などのリハビリテーションの開発も行われています。

重要さを増すチーム医療

新しい治療法は、非常に複雑化しています。そのため、主治医だけの意見やガイドラインに沿って進める治療ではなく、患者さんを中心とした多職種によるチーム医療が重要になっています。がんのステージの診断や浸潤範囲を放射線診断医が行い、耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が外科切除の適応を考えます。手術で切除した部分の再建については形成外科医、歯のかみ合わせ(咬合)や食べ物をかみ砕く力の回復については歯科口腔外科医にそれぞれ意見を求めます。手術だけでなく、放射線治療についても放射線治療医と検討し、同時に薬物療法の適応についても腫瘍内科医の考えを聞きます。このように、口腔がんの治療においては、どのような治療を選択するのかをチームで総合的に検討する医療が進んでいるのです。

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