一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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学会について

17代 理事長挨拶

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 理事長 森山 寛

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 理事長 森山 寛

学会の活動

 日本耳鼻咽喉科学会(日耳鼻)は、1893(明治25)年に設立されました。日本医学会連合に加盟する医学系学会として、本邦で最も長い歴史を持つ学会の一つであり、同時に世界で初めて耳科、鼻・咽頭科、喉頭科を一つにまとめ、耳鼻咽喉科学という学問体系を作りました。すなわち日本が耳鼻咽喉科学の発祥の地であります。なお現在では多くの大学で“耳鼻咽喉(科)・頭頸部外科学”という講座や教室名となっており、耳、鼻、口腔・咽喉頭、頭頸部腫瘍から睡眠時無呼吸、嚥下障害までの多彩な領域を専門とし、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢の多岐にわたる疾患を外科的あるいは内科的に診療する感覚器・運動器科分野であります。
 現在、日耳鼻は様々な領域において16の“関連する学会”を有しておりますが、国際学会も増えている中、将来を見据えて学術的な深化、プログラムの充実や効率的な学会運営、会員が集中して参加できるために学会の集約化や統合を推進しています。2021年に日本免疫アレルギー学会と日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会が統合します。また現在、日本喉頭科学会と日本嚥下医学会や日本聴覚医学会と日本音声言語医学会が連続開催するなど、少しずつではありますが、集約化に向けて前進しています。
 毎年の秋に開催している日耳鼻専門医講習会の拡充も行っています。昨年は補聴器相談医委嘱のためのコースを新たに企画しました。今年秋の第34回の講習会からは、名称も“日耳鼻秋季大会:オータムセミナー”とし、従来の専門医講習会の他、専攻医のための夏期講習会、補聴器相談医委嘱のための講習会、さらに日本臨床耳鼻咽喉科医会のための医会セッション(学術集会)を組み込みます。内容も充実し満足度の高い講習会になると思います。一方、春の総会・学術講演会の企画においても充実した内容にするために学術委員会と学術WGを中心とし検討しており、プログラムが多彩になったことは会員の先生方もすでに実感されている事と思います。
 数年前より会員の方の利便性や手続きの効率化、データの正確性のために新たな会員情報の新システムを立ち上げ、学会における専門医の単位の取得・履歴確認や会費納入などに有用な仕組を導入し、改良を加えながら徐々に本格運用となっております。
 日耳鼻では、超高齢化社会に向けて難聴疾患への積極的な対応を行っており、行政のバックアップを得ながら乳幼児期から高齢者に至るまでの難聴対策プランを検討しています。また22の専門の委員会において広範にわたる活発な活動がなされています。広報とくにホームページの充実にも努力しており豊富な情報を得ることが出来ますので、ぜひホームページへのアクセスをお願いします。さらに社会的な要請である男女共同参画を積極的に推進し女性医師の活躍する場の環境づくりを行っています。
 将来の人口動態を考えると、摂食嚥下障害診療は極めて重要となります。とくに在宅や施設における嚥下障害患者の診断・治療においては、耳鼻咽喉科医師が主体的に係るべきですが、現状では地域により耳鼻咽喉科医師の関与の度合が様々であります。摂食嚥下障害は多種多様な要因があり、患者・家族に満足いただける医療提供のためには多くの職種の連携に基づく医療提供が必要です。リハビリテーション科、歯科やコメディカルそして行政の協力を得ながら職種連携やネットワークの構築などを行う必要があります。とくに咀嚼機能、口腔衛生や口腔機能の評価の専門である歯科医師との協力は重要であり、日本歯科医師会との協議を継続して行っています。
 学会として会員・専門医の医療レベルのアップならびにより安全で質の高い医療の担保も重要な責務の一つであります。レベルの高い専門医育成のための専門医制度の運用のみでなく、講習会などでハンズオンセミナーを実施し、専攻医や若手医師の技能アップに努めています。一方で手術レベルと教育レベルのアップのための耳科ならびに鼻科の領域においての“手術指導医”認定制度がいよいよスタートします。
 各地域において良質の医療を提供するためには実地医家のしっかりした組織が必要です。すなわち地域医療、学校保健や保険医療など、耳鼻咽喉科医療の充実のための医会の全国組織化も順調に進み、“日本臨床耳鼻咽喉科医会”も立ち上がり、多くの診療所ならびに病院勤務の実地医家の先生に参加していただいております。これからは、学会と医会とが役割分担をしながら、耳鼻咽喉科診療の活性化と満足いただける医療の提供に努めたいと考えています。
 さらに信頼される耳鼻咽喉(科)・頭頸部外科を目指して、学会としての広範にわたる重要課題に対して迅速にまた積極的に対処して参りますので、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願い致します。

2020年1月6日掲載

ご挨拶

 本学会は今年で126年目を迎えました。欧州の留学から帰国した金杉英五郎(本学会の初代会長)が、1893(明治26)年に、世界に先駆けて耳科、鼻・咽頭科、喉頭科をまとめて一つの学問体系として“耳鼻咽喉科”を創立しました。すなわち日本が斯界の発祥の地であります。
 耳鼻咽喉科は、乳幼児から老年までの多くの多岐にわたる疾患を外科的あるいは内科的に診療する感覚器・運動器科学であり、対象となる領域は広く、中耳炎・聴覚・平衡などの耳科学、副鼻腔炎・アレルギー・嗅覚などの鼻科学、舌・口腔・咽頭などの疾患、味覚や睡眠時無呼吸を扱う口腔・咽頭科学、音声・言語・嚥下などの喉頭科学、頭頸部腫瘍を扱う頭頸部外科学であります。国際的にも“Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery”と呼称されており、本邦でも半数以上の大学において講座名や診療科名が“耳鼻咽喉(科)・頭頸部外科学”となっております。
 本領域の特徴の一つとして眼科、形成外科、小児科、脳神経系ならびに気道や食道に関係する外科・内科、リハビリ科、歯科・口腔外科を含めた他科との境界領域の多いことが挙げられます。従って質の高い医療を提供するためには医療連携の構築が重要となり、連携によりお互いの存在価値、専門性を高めながら、患者さんの利益に貢献してゆくことにもなります。
 現在、理事長として二期目であり、「先端医療を含めた学術の振興」、「社会医療の充実」、「信頼できる医療の提供」、「人材育成」、「専門医制度を含めた卒前・卒後教育の充実」、「広報活動の強化」、「財務基盤の強化:安定的で活動的な学会運営」を日耳鼻運営の基本方針とし、22の委員会において活発な活動がなされております。
 社会背景や時代のニーズに対応するための定款変更、将来の学会運営の方向性の指標となる調査のほか、オウンドメディアサイトを立ち上げて耳鼻咽喉(科)・頭頸部外科領域の重要性の広報や啓発活動を展開し、厚労省からは、患者さんにとって極めて利便性の高い模範的なホームページであるという推奨もいただきました。女性参画については、日耳鼻委員会における女性医師の委員数を約20%まで引き上げました。
 学術に関しては、学術講演会における多彩なプログラム編成がなされ、また専門医講習会においては専攻医のためのコースや臨床医会の講習会の併設など内容の拡大・充実を検討しております。日耳鼻は現在16の関連する学会を有しておりますが、将来を見据えて学術的な深化、プログラムの充実や効率的な学会運営のために、関連する学会の集約化や同時開催などを具体的に進めております。一方で学会の責務としての医療の質を保証するための技術認定制度を開始します。耳科、鼻科における手術指導医の制度です。また曽田基金により、将来の基礎研究の発展と若手研究者の育成のために“日耳鼻研究奨励賞”の制度を創設し授賞しました。
 地域医療の充実を始め、様々な耳鼻咽喉科医療の向上ための医会の全国組織化(日本臨床耳鼻咽喉科医会)は予定通りに進展しております。また会員の利便性を高めるシステムの運用が開始され順調に稼働しております。一方で女性枠や医会枠など理事会の構成の在り方など幅広い見直しを行いました。
 「魅力ある耳鼻咽喉科に向けての学術の振興、教育の推進、人材育成、社会医療の充実ならびに日耳鼻運営などに関するスピーディーな改革」を重点とし、さらに信頼される耳鼻咽喉(科)・頭頸部外科をめざして、学会としての様々な重要課題に対して積極的に対処して参りますので、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願い致します。

2019年6月25日掲載

新年のご挨拶

 新年あけましておめでとうございます。 新たな年を迎えるに当たり、ご挨拶を申し上げます。
 平成30年5月の総会において理事長に再任され平成30・31年度の2年間のかじ取りを任されました。耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の幅広い領域の医学・医療の発展に貢献するとともに、良質な医療を提供し、基礎・臨床研究の推進、活発な国際交流、学術の振興や生涯学習を更に加速してまいります。
 本学会は昨年に設立125周年を迎えました。明治25年(1892年)に本学会の初代会頭の金杉英五郎が当時、欧州においては独立していた耳科、鼻・咽頭科、喉頭科の3つの診療科を、世界に先駆けて耳鼻咽喉科学という学問体系として一つにまとめ講義を開始しました。翌 明治26年(1893年)日本耳鼻咽喉科学会の嚆矢となる“東京耳鼻咽喉科会”創立と同時に学術誌を創刊し、学会の基礎をつくりました。以来長い歴史を刻んでおり、現在では、総会員数約11000名、専門医は約8800名であり、関連する学会は16を数えます。
 耳鼻咽喉科・頭頸部外科は感覚器・運動器科学であり、その対象となる領域や疾患は多岐に及び境界領域の多い科です。そして乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の疾患に対して外科的・内科的な診療を行う科であり、五感のうち聴覚・嗅覚・味覚・触覚を扱い、人間社会の発展や文化形成に重要な感覚器官です。これらの器官に障害があると、コミュニケーション(聴覚、音声言語)や摂食嚥下などに支障を来しQOLは低下します。とくに超高齢・長寿社会における高齢者の難聴、バランスや嚥下機能の障害、嗅覚・味覚障害を含め感覚器機能の低下は、QOL・ADL、認知機能、健康寿命に大きく影響します。
 毎年5月の総会・学術講演会、11月の専門医講習会を始め、多彩な学術集会・講習会の開催や、日耳鼻会報や英文誌(ANL)などの学術誌を定期刊行しております。学術的な貢献だけではなく、地域医療、学校保健、成人老年・乳幼児における福祉医療、保険医療などの社会的課題の解決にも熱心に取り組んでおります。
 これら健全な学会運営と社会貢献のために22の委員会がそれぞれ有機的に活動しております。また男女共同参画推進のため、女性医師の委員登用も積極的に行い全体の約20%となっています。
 専門性の高い診療領域である当科においては、生涯教育の一環として昭和59年より、良医育成のための知識だけではなく症例の経験や検査、手術まであらゆる臨床現場に対応できる医師の育成を目指し専門医制度を運用してきました。そして平成29年度からはさらに臨床実績を重視した新たな専門研修プログラムを導入した専門医制度を運営し、大学病院などを中心に地域を含めた関連施設で学習する研修プログラムによる質の高い専門医の育成を行っております。
 提供する医療の質の担保は、学会として国民に向けての大きな責任であります。従来は、補聴器相談医、めまい相談医、嚥下相談医の制度など日耳鼻や関連する学会認定として相談医という仕組みで対応してきましたが、耳科と鼻科の領域において新たに“手術指導医”の制度設計を検討しています。
 また若手医師の研究促進を図るべく日耳鼻研究奨励賞を新設しました。
 来たる150周年に向けて、患者さんから信頼される医療体制の構築をめざしながら、国民の保健・医療・福祉への啓発、貢献をゴールに、学会としての重要課題である「学術の振興」、「質の高い専門医の育成」、「信頼できる医療の提供」の3つの柱を強化して参ります。
 「信頼できる良質な医療の提供」のためには“他科とくに境界領域との連携・協調”が重要であります。患者さんを中心に他科・他職種との連携(協働)体制を構築し、お互いの存在価値、専門性や総合力を高めながら、世界に冠たる耳鼻咽喉科として患者さんの利益に貢献してゆく決意です。

平成31年1月7日

2019年1月7日掲載

さらに魅力ある耳鼻咽喉科への前進

 平成30年5月の総会において理事長に再選され、日耳鼻の2年間のかじ取りを任されました。さらなる魅力に溢れた学会つくりを目指します。
 本学会は、総会員約11000名、専門医約8800名を有し、関連する学会は16を数えます。幅広い領域の医学・医療の発展に貢献していることが特筆すべき特徴であり、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学に関し国民に良質な医療を提供するとともに、活発な国際交流を展開し、学術の振興と生涯学習も強く推進しております。これら学術的貢献に加え、学校保健、成人老年・乳幼児における福祉医療、保険医療などの社会的課題の解決にも22の委員会を中心として相互に機能的に連携しながら、健全な学会運営と社会貢献のために積極的に活動しています。
 耳鼻咽喉科・頭頸部外科は、五感のうち、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を担う幅広い領域にわたる大きな役割を持つとともに、口腔・咽喉頭の腫瘍を始めとした頭頸部領域疾患の機能再建外科(発声・嚥下など)を含め、高頻度・多様な疾患を治療し、また年齢的にも乳幼児から高齢者までを対象とする幅広い診療科であります。
 超高齢・長寿社会における高齢者の難聴、バランス感覚や嗅覚・味覚障害など感覚器機能の低下や嚥下機能の障害は、QOL・ADL、認知機能に大きく影響します。学会は、これら社会的問題の予防、改善に向けて大きな役割を果たすことが期待されています。
 耳鼻咽喉科学という学問・診療体系は世界に先駆けて、日本で生まれた歴史があります。欧州の留学から帰国した金杉英五郎先生(本学会の初代会頭)は、明治26年(1893年)、欧州において各々独立していた耳科、鼻・咽頭科 、喉頭科 の3つの診療科を一つにまとめ耳鼻咽喉科学という学問体系を作り、日本耳鼻咽喉科学会の嚆矢となる“東京耳鼻咽喉科会”を創立しました。そして、学術誌“耳鼻咽喉科雑誌”を創刊し、現在の日耳鼻会報の基礎をつくりました。以来125年の長い歴史を刻んでいます。
 125年間にわたり意欲に溢れた先人の先生方の努力で、本学会は着実な発展を成し遂げてきました。さらに魅力ある耳鼻咽喉科に向けて、先端研究の推進、高度・先進医療の開発・実践への協力など「学術の振興」、「良質な専門医の育成」と「信頼できる医療の提供」との三本柱の強化に加え、高齢社会への貢献、女性医師参画の更なる推進を目指します。また安定的で活動的な学会運営のための財務基盤の強化を始め、日耳鼻運営に関する山積する既存の課題に対し、スピーディな改革を行います。
 大学病院、基幹病院と診療所がそれぞれの機能・役割を果たし、相互に補完しあいながら、境界領域の診療科とも有機的に連携し医療ネットワークを構築してゆきます。全国的な医会組織も立ち上がる状況の中、学会、地方部会と医会の密接な連携は、地域医療(救急医療、在宅医療、検診や学校保健など福祉医療など)の充実を含め、信頼される医療体制の実現のために必要不可欠です。変化する環境に応じた国民の保健・医療・福祉へ貢献を達成すべく、次の150周年に向けて、さらに信頼される耳鼻咽喉科をめざして学会としての重要課題に積極的に対処して参りますので、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願い致します。

2018年7月10日掲載

“超高齢少子社会における耳鼻咽喉科の重要性”

 新年あけましておめでとうございます。 新たな年を迎えるに当たり、ご挨拶をさせていただきます。
 QOLに直結する感覚器を扱う耳鼻咽喉科は、頭頸部外科学も含め多彩な領域をカバーし、境界領域も豊富であり、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の疾患の診療をいたします。また診断から保存・手術的治療まで一貫して関与でき、外科でありながら内科的な治療も行う魅力的な学問・診療領域であります。
 近年とくに感覚器の重要性や感覚器に起因する諸問題が生活や職場において認識、指摘されています。多くの感覚器を扱う耳鼻咽喉科は、超高齢少子社会における様々な課題解決に向け、最も存在感を期待される診療科と言えます。聴覚、平衡覚、味覚、嗅覚、発声・構音や嚥下機能の障害などは、小児においては言語獲得に、また高齢者においては、うつ症状、認知機能にも影響し、QOLの大幅な低下につながります。小児の成長、高齢者および家族の活力を損なわないためにも、早期治療、予防に対して積極的な関与が重要となります。
 1600名以上の急激な医学部の定員増で医師の過剰も喫緊の課題となっていますが、耳鼻咽喉科は広い領域を守備範囲としながらも、志望者の減少に悩まされてきました。近い将来の耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域を担う中堅のマンパワー不足から、地域における耳鼻咽喉科の適正な医療供給の障害の可能性がありましたが、平成30年度は、専攻医の増加が見込めます。超高齢少子社会における感覚器科学の重要性、やりがい、また各プログラムの充実などが、研修医や医学生に理解されつつある結果と、大変意気に感じております。このまま順調に志望者が増え続けてくれれば、そのマンパワー不足も払しょくされ、患者、社会からの期待に十分に応えてゆくことができます。
 現在、日本耳鼻咽喉科学会は、“医会の全国組織化”、“学術講演会・専門医講習会の企画の多様化”、“学会の集約化、統合”、“充実した研修制度の維持”、“会員情報の一元管理”、“他科とくに境界領域との協調”などの重点施策の遂行、検討により、良質な医療の提供、地域医療への貢献、耳鼻咽喉科の学術・教育の充実、学会運営の活性化を少しずつ実現しています。他科と互いの診療科を認め合いながら、患者さんを中心とした協働体制を構築する方向で活動しております。他科との調和、連携によりお互いの存在価値、専門性を高めながら、患者さんの利益に貢献してゆくことにもなると思います。
 世界に先駆けて「耳鼻咽喉科学」を立ち上げ125年、長い歴史を持つ日本の耳鼻咽喉科は、ある意味成熟した医学・医療の領域ですが、さらなる先端研究や高度先進医療の開発も進んでおり、それらの提供とともに新たな歴史を刻んでまいります。
 今年も皆様にとりまして、また医学・医療にとりましても良い年となりますように祈願しております。

2018年1月5日掲載

耳鼻咽喉科の歴史、現在、そして未来

 日本耳鼻咽喉科学会は来年で創立125周年を迎えます。学会創設に尽力した金杉英五郎が、5年のドイツ留学を終え帰国した明治25(1892)年、当時の欧州では、耳、鼻、喉頭はそれぞれ独立した科でした。金杉は世界で初めてこれらを統合し“耳鼻咽喉科”という新しい名称と学問体系を創設、翌明治26(1893)年、「東京耳鼻咽喉科会」を結成し、学術誌「耳鼻咽喉科雑誌」を発刊したのが、本学会の嚆矢です。

 現在では1万1千名余の会員と16の関連する学会とを有し、質の高い耳鼻咽喉科医を育成する専門医制度を運営し、多くの学術集会・専門医講習会などの開催や和文・英文ジャーナルの発刊と共に、先端研究や高度医療技術の開発支援を行っております。また福祉医療(成人老年・乳幼児)、産業・環境保健、保険医療などソーシャル医療にも熱心に取り組んでいます。

 耳鼻咽喉科は、感覚・運動器科学として聴覚や発声・言語など人間社会の発展やカルチャーの形成に重要な臓器を扱う学問・診療領域です。また難聴、嗅覚・味覚障害、平衡障害、嚥下障害など、超高齢化社会においては、認知症やQOLに直接に関係します。耳鼻咽喉科は頭頸部外科学も含め、バラエティに溢れる専門分野を有し、幅広い診療をカバーする魅力ある診療科です。また眼科、小児科、神経内科、脳外科、形成外科、歯科・口腔外科など連携する領域科が多く存在し、幼小児、若年、壮年者から高齢者まで対象層も広く、診断から保存・手術的治療までトータルに関与でき、外科系でありながら内科的な側面もある奥深い領域科です。

 新たに立ち上がった専門医機構により、整備指針が示され、平成30年度からはすべての基本領域学会が新プログラムで一斉スタートする予定です。それに先駆けて耳鼻咽喉科学会は平成29年度から、大学病院などの基幹病院を中心に、臨床実績などを重視した魅力ある専門研修プログラム(いわゆる暫定プログラム)を整備した結果、約200名の専攻医が良質な教育環境のもと研修を開始しました。一方、専門医機構の掲げる専門医の更新に係る単位制の導入後より、学術講演会や専門医講習会において、会員の先生方にはご不便をおかけしておりますが、この混乱をミニマイズすべく、プログラムや会場設定などの早急な改善を検討中です。

 平成28年度には、日耳鼻の運営や耳鼻咽喉科の将来ビジョンについて幅広く横断的に見直す“改革推進会議”を始め各種WGを立ち上げ、改革に向けた活発な活動に着手しました。“医会全般に関するWG”では、地域医療計画に即し、救急・在宅医療や学校保健など地域のニーズに応える耳鼻咽喉科医療の充実を図り、全国的な医会組織の構築、機能強化に向けて着実に前進しています。また“学術に関するWG”では、学術講演会や専門医講習会の在り方を再検討する一方、関連する学会の機能的な連携に関しても討議を始めました。今後の学術の質の向上や人口減・会員数減を考えると、学問の専門性と進歩のための細分化の時代から、学会の集約化も視野に入れた統合の時代に移るべきと考えます。まずは学会の同時開催などについて各関連する学会と歩調を合わせながら、継続して模索してゆきます。また各種の会員データー管理や専門医の更新に係る単位取得なども含めた会員の利便性アップのための“会員情報の一元管理のWG”を立ち上げ、会員情報を効率よく正確に運用する準備をしています。

 124年前に耳・鼻・咽喉を統合、世界初の「耳鼻咽喉科」を立ち上げた日本耳鼻咽喉科学会として、患者をトータルで診るという原点に立ち返り、境界領域の科を始めとする他科との連携によりお互いの存在価値、専門性を高めて参ります。良質な医療を提供する感覚器・運動器科学のエキスパートの育成と質の向上、耳鼻咽喉科に期待される多様な課題解決を通じて、耳鼻咽喉科学(医学・医療)の発展に寄与し、患者さん、地域社会の利益に貢献していく、それが耳鼻咽喉科・頭頸部外科のビジョンです。

2017年7月19日掲載

年頭の挨拶

 日本耳鼻咽喉科学会のホームページを訪問いただきありがとうございます。関係者の皆さまにとって魅力のある耳鼻咽喉科になるように、学会として努力、精進してまいります。
  耳鼻咽喉科は、頭頸部外科を含めて外科であるとともに内科的な側面も多く、人間の五感のうち、視覚を除く聴覚、嗅覚、味覚、触覚を担う幅広い領域の診療科です。日本は世界に先がけた未曾有の超高齢社会を迎えました。このような社会では、高齢者のバランス感覚や嚥下機能障害を含め感覚器機能が低下することは、うつ症状、認知機能の低下など、QOL・ADLに大きな影響を与え、社会の活力にも関わります。私たち耳鼻咽喉科学会は、これらの予防、改善に向け、幅広く積極的に活動をしてまいります。
  私たち学会は、人口が減っていく時代を迎えても、質の高い耳鼻咽喉科医療をめざし、あらゆる対策を講じています。医療の質の向上、医療機関どうしの連携、眼科、形成外科、脳外科、呼吸器内科、歯科・口腔外科などとの連携、救急医療、在宅医療や学校保健などの充実のための支援、患者さんの耳鼻咽喉科医療に対する理解の促進、啓発などです。これらを実現するためのワーキンググループにも力を入れ、医療機関の役割分担など効率的で、かつ患者さんから信頼される医療体制の構築を目指しています。
  近年の医療は専門性を高めるため、高度に細分化されてきました。結果、医療レベルは格段に進歩しました。しかし、これからは専門性を高めつつ、同時に総合的に患者を診ることができる耳鼻咽喉科医の育成は社会のニーズとして期待されています。
  専門医の質向上を目的とした専門医制度は、地域医療崩壊などの懸念から機構体制、整備指針がリセットされ、基本領域学会においては新たなプログラムによる一斉スタートは延期されました。平成29年度は旧制度で運用する基本領域学会が多数のなか、耳鼻咽喉科学会は国民の期待に応えるべく、臨床実績を重視した新たな専門研修プログラム(いわゆる暫定プログラム)を用いて開始します。専門性の高い当科診療領域では、大学病院などを中心に地域を含めた関連施設で学習する研修プログラムが質の高い専門医育成のため最善であり、地域医療も守られます。
  多くの診療科との境界領域が極めて多い耳鼻咽喉科として、また、世界で初めて耳科、鼻・咽科、喉頭科を統合して耳鼻咽喉科の学問体系を構築した124年前の初心に立ち返り、他科との融和、連携により対象となる領域を広げ、お互いの存在価値、専門性を高め、患者さんの利益に貢献したいと思います。
  会員のみならず医学生や患者さん、ご家族の方にも使いやすい学会ホームページを通じて、双方向のコミュニケーションが活発になるような、開かれた学会運営をする所存です。このホームページにアクセスいただく関係者の皆さまにとって、飛躍の年となることを願いながら、改革に向けての皆さまのご協力をよろしくお願い申し上げます。

2017年1月5日掲載

ご挨拶

 平成28年5月に開催されました日本耳鼻咽喉科学会総会・理事会において、第17代日本耳鼻咽喉科学会理事長に選出され、2年間の学会の運営を任されました。

 日本耳鼻咽喉科学会は、明治26年2月に発足した東京耳鼻咽喉科会を源流として、今日まで123年間、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学に関し、国民に良質な医療を提供すると共に国内外の学術振興に寄与してきました。現在では、関連16学会を有し、総会員数は10900名余であり、質の高い医師の育成のための専門医制度運営を行い、産業・環境保健、福祉医療(成人老年・乳幼児)、保険医療など社会医療にも熱心に取り組んでおります。また多くの学術集会・専門医講習会などの開催や和文・英文の学術誌を発刊しております。

 耳鼻咽喉科は、五感のうち、聴覚や言語など人間社会の発展や文化の形成に重要な臓器を扱う学問・診療領域です。平衡障害、聴覚障害、中耳炎、あるいは顔面神経の障害などの耳科学、副鼻腔の炎症や腫瘍、アレルギー、顔面外傷などの鼻科学、舌・口腔・扁桃疾患などの中咽頭、食道の入り口である下咽頭の疾患や睡眠時無呼吸を扱う咽頭領域、そして音声や嚥下に関係する喉頭領域を扱います。さらに頭頸部癌や唾液腺、甲状腺腫瘍を扱う頸部領域など対象となる疾患は多岐にわたるため、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学(Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery)と呼称されております。また幼小児から高齢者まで幅広い年齢層を診療する科であり、外科系でありますが内科的な側面もあり、手術的治療の多くは、機能再建外科となっているのが特徴であります。そして診断から治療まで一貫して関与できる科と言えます。

 本来、学会は、国民の健康増進を目的に、良質な医療を提供するための専門医の育成と質の向上、ならびに地域医療への貢献そして耳鼻咽喉科学(医学・医療)の発展に寄与する責任があります。また一方で、構成員である会員に対する責任があります。そのために診療、研究、教育、学会の在り方など、魅力ある耳鼻咽喉科になるための改革、すなわち学会員が等しく将来展望を共有できる改革のため、All Japan体制による学会組織と運営の強化刷新(継続性と新陳代謝)、総会・学術講演会、専門医講習会や関連学会などの在り方の再検討、専門医のレベルアップに向けての改革(新専門医制度への対応と有効活用)が急がれます。さらに将来の医療の在り方にマッチする診療形態へのシフト、耳鼻咽喉科志望者増加の方策、break throughとなる医学・医療の開発やseedsの発掘と援助を積極的に行ってまいりたいと考えております。

 歴代の理事長・理事会の努力により、充実した学会運営がなされてまいりましたが、急激な進歩・変化をとげている医学・医療や患者さんのニーズに対応するために、常に変革・改革が求められております。理事会一丸となって、国民そして会員の皆様の期待に応えるような活動を行いたいと考えております。皆様のご支援とご理解を何卒よろしくお願い申し上げます。

2016年6月29日掲載
Last update: 2022年12月7日
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