年頭のごあいさつ
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
理事長 大森 孝一
新年明けましておめでとうございます。
会員の皆様には、日頃より本学会にご支援ご協力いただき誠にありがとうございます。
本学会が果たすべき役割は大きく二つあると考えています。一つ目は専門的で質の高い医療を国民にわかりやすく説明し提供すること、二つ目は臨床に役立つ研究を推進し新しい医療を開発し実用化することです。
国民にわかりやすく説明するために、新たな広報・啓発活動として昨年7月からACジャパンによる難聴啓発キャンペーンを始めました。近藤真彦さんに出演いただいたテレビやラジオでのコマーシャル、駅でのポスターをご覧になった会員も多いと思います。また、80歳でささやき声30dBが聞こえるようにという聴こえ8030運動も開始しています。日本医学会連合領域横断的連携活動事業(TEAM事業)に「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」が採択され、その一環として、昨年の9月に「難聴と認知症」をテーマとしたメディアセミナーを開催しました。今年の耳の日の講演会では、従来の耳鼻咽喉科医師に加えて厚生労働省から日本での難聴対策についてお話しいただく企画を予定しています。メディアや行政と一緒になって難聴啓発を進めていますので、患者さんが来院されましたら一層寄り添った対応をお願いできればと思います。
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は子宮頸がんや中咽頭がんなどの発症要因であり、これまで日本産科婦人科学会と共に重要なテーマとしてHPVワクチン接種の推奨に取り組んできました。昨年11月には「HPV関連がん」をテーマとしたメディアセミナーを開催しました。今年の総会では日本小児科学会もあわせて3学会合同シンポジウムを予定し、ジェンダーレス接種を目指して横の連携を密に進めていきます。
耳鼻咽喉科領域のリハビリテーションの普及にも力を入れており、日本リハビリテーション医学会との連携を強化しています。嚥下障害については、TEAM事業「『いつまでも健康で美味しく食べる』ための、多学会連携による嚥下障害対策の普及活動」も採択され、この活動を開始しています。また、国民病と言われる花粉症対策として、モデル地区を中心に重症化ゼロ作戦を進めています。
臨床研究の推進と新しい医療の開発・実用化に関しては、オールジャパンプロジェクトとして、医学的シーズや社会的ニーズを発掘し、学会主導で研究を推進しその成果を社会に還元したいと考えています。また、人工聴覚器や舌下神経電気刺激器などの新しい医療機器や、中耳や気道の再生医療などの発展も期待されます。
医療DXへの対応も重要な課題で、世の中はかなりのスピードで進んでいます。これまで日耳鼻ではワーキンググループ(WG)を作って、遠隔医療やオンライン診療、AI診療支援、ビッグデータ解析、モバイルヘルスについて情報の収集や提供を行ってきました。一昨年、昨年は秋季大会でオンライン診療の実技講習を行いましたが、今年は研究会を立ち上げて興味のある耳鼻咽喉科・頭頸部外科医を集め、新たな医療創出のきっかけにしたいと考えています。
学会では23の委員会と17のWGが活動しており、委員の皆さんに多大なご尽力をいただいています。今年の総会では委員会発案の魅力的なシンポジウムを多数企画し、参加者の皆様には、未来ビジョンをお届けできるものと思いますので是非ご期待ください。
一昨年、昨年と耳鼻咽喉科専攻医希望者数が激減しています。緊急対策として、耳鼻咽喉科の魅力をアピールする企画を複数立ち上げました。昨年の秋季大会ではTEDプレゼンテーションや教育セミナーを開催しました。今年の総会では例年通りのハンズオンセミナーを予定しますが、7月末に講演と懇親会とハンズオンを組み合わせた1泊2日のサマースクールを開催します。対象は医学生4年生~6年生、初期研修医1、2年目です。各教室から1名は来ていただければありがたいです。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科は学問としても医療としても本当に面白い分野です。特徴はたくさんあり、1.幅広い患者層、2.多様な疾患の治療、3.働く場所が多様、4.いろいろな働き方、5.最新の機器を用いた手術、6.最新の研究、7.他科・他職種との連携が多く広い視野で学際的アプローチができることです。7つの魅力を学会のホームページで説明していますので是非ご覧ください。
(https://www.jibika.or.jp/modules/residents/index.php?content_id=2)。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科の魅力をまとめると、感覚器のエキスパート、気道救急や頭頸部がん診療など命を守るエキスパートとして活躍でき、豊富なサブスペシャルティがあることです。アメリカではトップ3の人気診療科です。日本でもそのような価値の高い診療科を目指して進んでいきたいと思います。
皆様にとって輝かしい年になりますように!
2025年1月6日掲載