一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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年頭の挨拶

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
理事長 村上 信五

 このたびの「令和6年能登半島地震」により被災されました会員、ご家族の皆様には心よりお見舞い申し上げます。羽田空港における飛行機火災事故も含め、新年から天災や事故が多発しておりますが、会員の皆様には健康で希望に満ちた明るい年になることを祈念しております。小生も昨年夏には劇症型心筋炎を患い療養しておりましたが、お陰様で全快し復帰しております。ご心配をおかけしました。
 さて、2020年2月に到来した新型コロナウイルスですが、感染拡大を繰り返した後に収束し、昨年5月8日に指定感染症2類相当から5類に引き下げられました。第1波は致死率が高く、コロナで人類は滅亡かと悲壮感が漂いましたが、見識あるウイルス学者は当初から、ウイルスはいずれ弱毒化して普通の風邪になることを予言していました。有史以前から繰り返してきた人類とウイルスの闘いと共存の歴史の一端を垣間見ることができました。
 耳鼻咽喉科にとってコロナ禍は、長くて暗いトンネルでしたが、明るい話題も見えてきました。そのひとつは、昨年11月、横浜で開催した第37回日耳鼻秋季大会の際に韓国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会とMOUを提携したことです。MOUはMemorandum of Understandingの略称で、基本合意書あるいは了解覚書と言って、学術と人的交流を通して両学会の発展を促すための合意書です。日本と韓国とは1986年から36年間にわたり Japan-Korea Joint Meetingを交互に開催してきましたが、MOU提携を機に両学会の交流がより活発になることを期待しています。もうひとつの明るい話題は海外留学支援制度ができたことです。新型コロナで海外渡航が厳しく制限され、さらに円安が急速に進行したことで、海外留学を断念したり、希望さえ持てない若手医師が増えていました。将来の国際化が危惧されたため、早速、海外留学推進・支援WGを立ち上げ、財源を探していたところ、日本医科大学の奥田稔名誉教授が残された私財からご寄付いただけることになりました。基金名を「奥田 稔 研究・教育・育成基金」とし、曽田豊二基金と合わせて海外留学を含めた若手医師の研究・教育・育成に幅広く活用させていただきたいと考えています。尚、海外留学の支援額は1人500万円を限度に今年度は5名に授与しました。
 コロナ禍は厳しい試練でしたが学術集会や診療の在り方を見直す機会にもなりました。耳鼻咽喉科医療のあり方や医療体制、医師の教育・育成を展望し、アフターコロナに向けた「耳鼻咽喉科頭頸部外科医療の未来プラン」を策定しました。学会と臨床医会が取り組むべき中長期的な課題と目標を挙げています。具体的な内容はホームページの会員マイページに掲載しておりますので、是非、ご覧いただければと思います。

1.耳鼻咽喉科頭頸部外科の専門性をより発揮できる診療体制の構築
2.花粉症対策の推進
3.耳鼻咽喉科関連フレイル対策の推進
4.新興感染症対策の推進
5.在宅医療の推進と診療報酬の再評価
6.周産期・小児医療への積極的な関与
7.ワクチン接種の推進
8.学校医の柔軟な運用
9.耳鼻咽喉科救急医療の充実と再構築
10.全世代を通しての難聴対策「難聴対策基本法」の制定
11.働き方改革への対応
12.かかりつけ医としての専門性の確立
13.医療DXの推進
14.耳鼻咽喉科専攻医のリクルート
15. 耳鼻咽喉科医の教育と育成

 これら未来プランの実現には、関係省庁の理解や予算、財源の確保が欠かせません。特に新規医療の開発や医療システムの実用化にはオールジャパン体制で取り組む必要があり「日耳鼻オールジャパンプロジェクト」を立ち上げました。その嚆矢として、本年7月からACジャパン支援キャンペーンを活用して難聴の啓発を行います。国民に難聴とそのリスクを啓発し、適切な補聴により、ヒアリングフレイルから認知症、要介護へのプロセスが防止できることを期待しています。めまい・平衡障害や嚥下障害、嗅覚・味覚障害に関してもフレイル対策を進め、高齢化社会における国民のウエルビーイングの向上に貢献したいと考えています。
 世間を騒がせた芸能プロダクションも社名を新たにSTARTO ENTERTAINMENTに改称しました。アフターコロナに向けた耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の取り組みも新たなチャレンジになります。プランが実現した暁には明るい未来が待っています。START ENT!専門性を高め、診療を拡大し、国民の福祉と社会に貢献できる耳鼻咽喉科頭頸部外科を目指しますので、会員の皆様にもご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

2024年1月9日掲載

Last update: 2024年1月9日
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