一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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日耳鼻の新しい活動について

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
理事長 大森 孝一

 会員の皆様におかれましては、日頃より学会の活動へご支援いただきありがとうございます。日耳鼻の新しい活動についてお話しします。

1.啓発、広報活動
 国民にわかりやすく説明するために難聴啓発キャンペーンを始めており、ACジャパンによる啓発・広報活動として昨年7月からの近藤真彦さんに引き続き、今年の7月からはミミーズというキャラクターによる漫才で、聴力改善術、補聴器、人工内耳といった治療の可能性についても発信しています。80歳でささやき声程度の30dBが聞こえるようにといった聴こえ8030運動も進めています。
 難聴診療につきましては、国民が難聴に気づいて受診した際に適切に説明できるように診療アルゴリズムを作って会員にお配りしました。補聴器相談医については以前から有資格者リストの公開は行っていましたが、今年から実際に補聴器診療を行っている補聴器相談医リストの公開を開始しました。全国の自治体で補聴器助成制度も広がっており、患者さんや行政から見て、難聴がある場合にどこに行けば良いかわかりやすい情報を発信したいと思います。難聴と認知症の関連は今まさにトピックスで、聴覚補償によりある程度は認知機能の低下を抑制できることが分かってきました。国民や医療関係者に広く啓発していく必要がありますので、会員の皆様も一緒にお願いします。
 11月には東京でデフリンピックが開催されます。聞こえない方々のスポーツに感動する場面も多いと思います。日本サッカー協会、日本ろう者サッカー協会との協力をいただいて、デフサッカー女子日本代表チームを撮影したドキュメンタリー応援動画を公開しております。日本の聴覚障害の認定基準は70dBですが、デフリンピックの出場基準が55dBであり、学会や医会として難聴の診断やドーピング対策などにも協力しております。
 学会では23の委員会と17のWGが活動しており、委員の皆さんには多大なご尽力をいただいています。今年の第126回総会では、委員会発案の魅力的なシンポジウムを多数企画し、未来ビジョンとしてお届けしました。来年1月の全国会議や5月の第127回総会でも充実したプログラムを提供いたします。

2.他学会との連携
 耳鼻咽喉科だけでは進められない医療が多くありますので、他学会とのネットワーキングに力を入れています。まず新生児難聴について、新生児聴覚スクリーニングや先天性サイトメガロウイルス感染症などを話題として、日本産婦人科学会、日本小児科学会との共同シンポジウムを5月の日耳鼻総会で実施し、11月の日耳鼻秋季大会でも予定しています。また、HPVワクチンのジェンダーレス接種を目指した活動も3学会で一緒に行っています。日本眼科学会とは日本学術会議感覚器分科会で、感覚器に関する公開シンポジウムを来年2月に行う予定です。
 専門医制度につきましては、日本専門医機構にご指導を頂きながら進めています。また、日本整形外科学会、日本眼科学会、日本皮膚科学会、日本脳神経外科学会、日本泌尿器科学会、および日本形成外科学会による専門診療科連携会議を今年2月から開催しています。規模的に近いこれらの基本領域学会と専門医制度だけでなく、学会運営や行政との連携など幅広く意見交換を行っています。

3.新しい医療への取組み
 新しい医療への対応として、耳鼻咽喉科頭頸部外科医療DX研究会を立ち上げました。日耳鼻秋季大会の前日の11月21日(金)に第1回を開催します。診療所でのデジタル化、へき地をつないだ遠隔医療、個別化・効率化されたモバイルヘルス、最先端のAI研究まで幅広い内容になっています。興味のある耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が集まり、新たな医療創出のきっかけにしたいと考えています。是非ご参加ください。
 高齢者耳鼻咽喉科医療も重要です。高齢化に伴い、聴覚、平衡、発声、嚥下などの機能が低下します。聴覚では補聴器や人工内耳の積極的な活用が考えられます。嚥下機能低下が嚥下障害へ進み誤嚥性肺炎につながっていくと考えられ、早期発見とリハビリテーションにより改善できると思いますので、会員の皆様も嚥下機能の検査や評価をお願いします。今後国では医療と介護の一体化が進められる中で、学会として高齢者医療に力を入れていきます。
 臨床研究の推進と新しい医療の開発・実用化に関しては、オールジャパンプロジェクトとして、医学的シーズや社会的ニーズを発掘し、学会主導で研究を推進しその成果を社会実装したいと考えています。今年は、耳鼻咽喉科頭頸部外科の専門性を活かして、医療や介護の現場における課題解決を目的とした臨床研究や、耳鼻咽喉科医療の将来戦略策定のため医療データに基づく解析を行う研究に対して、臨床研究スタートアップ資金を助成します。これは、日本臨床耳鼻咽喉科医会と共同で行います。

4.若手医師のリクルート
 臨床研修医・医学生のリクルートについては、従来は日耳鼻総会でハンズオンセミナーを中心に行っていましたが、昨年の秋季大会ではTEDプレゼンテーションや教育セミナーを開催し、今年11月の秋季大会でも開催します。さらに、今年の7月26日(土)27日(日)には1泊2日で第1回日耳鼻サマースクールを開催しました。土曜日は最新の耳鼻咽喉科医療の講演、日曜日は耳、鼻、頸部手術などのハンズオンセミナーを行いました。耳鼻咽喉科の魅力を体感していただけたものと思います。

5.国際化
 日耳鼻の国際化を目指して、昨年の大阪総会でアジアを中心とした海外から若手の演者に50名程度お呼びして国際セッションを開始しました。これに伴い、日本国内からも英語での発表を募り、各セッションは大変盛り上がりました。今年の横浜総会では70名程度お呼びし、懇親会も大変盛況でした。来年は、国際セッションに加えて、通常の一般演題でもスライドをできれば英語にしてもらう予定です。また、日本から海外への留学支援も令和5年から行っています。

6.最後に
 医療をとりまく状況は厳しくなってきておりますが、耳鼻咽喉科頭頸部外科では、がんや気道疾患などの救命医療に加えて、QOL向上など価値の高い医療を提供することが最も大切です。働き方改革や医師の偏在に対してはDXによる効率化や医師・患者などすべての医療関係者の意識改革を進めていく必要があります。また、今後は医療や介護の現場における国民のニーズに答えた耳鼻咽喉科診療が求められます。
 皆様のご意見を頂戴して学会を前に進めてまいりますので、ご支援をよろしくお願いいたします。
 

2025年9月17日掲載

Last update: 2025年9月17日
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