一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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学会認定制度

補聴器相談医の役割

はじめに

 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会補聴器相談医は、「補聴器販売の在り方に関する日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の基本方針(平成16年5月理事会決定)」に基づき、その方針の具体化を目標に診療と必要な活動を行います。基本方針では、わが国における補聴器販売において難聴者に不利益となる事例が発生していることを踏まえ、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、難聴者がそのコミュニケーシ ョン障害にて適切な補聴器を選択して使用できるように、適正な補聴器医療の構築とその円滑な遂行に努めることを宣言しています。一定の資格を満たした耳鼻咽喉科専門医を対象にして本学会理事長が「補聴器相談医」を委嘱します。
 補聴器使用者の大多数は、老人性難聴を代表とする感音性難聴の患者です。感音性難聴の特徴は、1)小さい音が聞こえない難聴に加えて、2)大きい音は正常者以上にうるさく感じる、3)さまざまな音の音質が劣化して不自然な音に聞こえる、4)十分大きい音で聞いても語音を聞き誤る異聴などの症状があります。その原因は内耳の感覚細胞および聴覚中枢路の神経系の機能低下であるため、どのような補聴器を使用しても完全に補うことは出来ません。
 補聴器の性能は、デジタル技術の導入で歪みのない音の増幅が可能となり、また新しい機能を備えた進化した補聴器も市場に出てきました。主な機能には、1)ボリューム操作をあまり行わなくても良いノンリニア増幅、2)定常的な雑音下でその周波数の増幅度を下げる雑音抑制、3)前方の音が良く聞え、後方の音は聞えにくいマイクロフォン指向性、4)耳の密閉を不要とするハウリング抑制、などがその機能です。ただし、補聴器の進歩は価格の高騰をもたらしました。多機能であるほど高価格となり、片耳で 30万円を超える補聴器も珍しくなくなりました。デジタル補聴器のさまざまな機能は、それぞれに個別の難聴者にとっては、会話の状況や聴覚障害の程度によって不要であったり、無効であったり、場合によっては逆効果になります。聴覚障害の状況、必要な会話理解能力、そして生活環境をも考慮して、合理的な価格で適切な機能の補聴器を難聴者が利用できるように、「補聴器相談医」は診療と補聴器相談等の求められる活動を行います。

補聴器販売の在り方に関する日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の基本方針

 わが国における補聴器販売の実態については、難聴者に不利益となる事例が多く発生しており、早急に改善を図る必要がある。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、難聴者がそのコミュニケーション障害に有効な補聴器を適正に選択して使用できるように、以下の基本方針のもとに実態の改善に努めていきたい。

  1. 補聴器は、難聴によるコミュニケーション障害の補完を目的とする医療機器であり、耳鼻咽喉科医の診断のもとに購入されるべきである。
  2. 補聴器販売に従事する者は、その難聴者に有効かつ適正な補聴器を販売するために、耳鼻咽喉科医の指導を受ける。
  3. 各都道府県地方部会では、地方部会長、補聴器キーパーソン、福祉医療委員会委員、補聴器相談医等の協力のもとに上記事項の実現を目指す。

具体的事項

  1. 補聴器製造販売業者および販売業者にたいして、薬機法(平成 26 年度施行)の遵守を指導する。
  2. 障害者総合支援法による補聴器の交付においては、適切な補聴器交付が行われるよう取り計らい、15 条指定医がこれを確認する。
  3. 耳鼻咽喉科医の指導を受けている認定補聴器販売店、認定補聴器技能者を支援する。
  4. 補聴器および集音器の宣伝においては、薬機法による広告規制の遵守を指導する。
Last update: 2022年11月21日
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