一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

English
学会について

12代 理事長挨拶:平成16・17年度

平成14・15年度 | 平成16・17年度

社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 理事長  上村 卓也

社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 理事長 上村 卓也

平成16・17年度理事会発足に当たって

 平成16年・17年度理事会発足に当たって、一言ご挨拶申し上げます。

 平成16年5月15日に発足した今期理事会は、前期理事会からの申し送り事項1.業務組織の見直し、2.定款・定款施行細則などの見直し、3.地域医療の調査と推進、4.耳鼻咽喉科の社会連携の強化、5.専門医認定試験の在り方、6.日耳鼻専門医講習会の充実、7.サブスペシャルティの検討、8.境界領域問題の検討・対処、9.会報、ANLの将来展望、10.学会事務所の移転、11.第50回「耳の日」についてなどを引き継いで、今後日耳鼻としての対応を協議し、2年間会務を執行していくことになった。これらの中で新たに加わった事項の一つの「耳鼻咽喉科の社会連携の強化」について、それを取り上げた背景について説明してみたい。

 最近、企業の社会的責任(corporate social responsibility, CSR)という言葉を見聞きする機会が増えてきている。CSRがこのように取り上げられ始めたのは、矢継ぎ早に明らかになる企業の不祥事との関連だけでなく、米国のビジネススクール流の”なんでも数字に置き換えて、その最大化を図る”という企業の在り方が行き詰まってきたことに拠っている。その結果、企業には利益最大化ではない目的、すなわち社会的責任を果たす必要性が強調されてきたからだと考えられる。

 これと全く同じことが、今後の医療についても言えるのではないだろうか。

 これまでの、診察室の中の医師・患者関係に止まることなく、診察室の外に出た在宅、介護を含めた、より社会的な連携をもった活動が医療には今後ますます求められてきます。今期も前期理事会に引き続いて、「耳鼻咽喉科という専門性の維持と強化」という目標を掲げて会務の執行に当たりますが、その後半の「耳鼻咽喉科の専門性の強化」の一つの切り口として「耳鼻咽喉科の社会連携」を取り上げていくことにしました。

 その手始めとして、本年11月20・21日に岡山市で開催される第18回専門医講習会プレナリーセッションにおいて新生児聴覚検診、補聴器、嚥下障害について社会連携の在り方を討議することにしています。

 再来年の2006年4月には、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われようとしています。このような変化の時代に対応していくためには、理事会と会員との間の情報交換、そして連携が従来以上に必要となってきます。

 理事長挨拶、理事会ニュースを初めとして、日耳鼻ホームページの充実にさらに努めてまいりますので、十分活用くださるようお願いして私の挨拶といたします。

2005年の年頭に当たって

 新年明けましておめでとうございます。

 本年も「耳鼻咽喉科という専門性の維持と強化」という前期以来の目標をかかげ、(社)日本耳鼻咽喉科学会(日耳鼻)の会務を執行していきたいと願っています。

 昨年は、この目標のための一つの切り口として「耳鼻咽喉科の社会連携」を取り上げ、新生児聴覚検診、補聴器、嚥下障害の三つのテーマについては岡山市での第18回日耳鼻専門医講習会において、それらの現状と今後の対応を討議しました。ここでは、この中の補聴器の問題を特に取り上げて、今なぜ補聴器か?について説明してみたいと思います。

 その理由の一つとして、平成17年4月から施行される「薬事法の改正」(厚生労働省)があげられます。この改正薬事法では、補聴器は単なる「医療用具」ではなく「管理医療機器」へと変更されます。その結果、補聴器の製造販売業者および販売業者には管理者の設置、品質確保、苦情・回収処理についての義務が課せられます。また、業者は納品先記録の作成、一般消費者が適正に使用するための情報の提供について努力しなければならなくなります。

 もう一つの理由として、すでに平成16年11月11日から施行された「特定商取引に関する法律等の改正」(経済産業省)があげられます。この法律の改正は、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売などに関する悪質な取引による高齢者等へのトラブルを救済することを目的としています。そして、誇大な広告や勧誘を行っている業者に対しては行政庁が「効能」「効果」の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができ、その資料の提出がない場合にはこの法律上の違反行為として行政処分の対象とすることができるようになっています。

 このような補聴器をめぐる背景の変化を一つの契機として、難聴者に不利益となる事例が多く発生している、わが国の補聴器販売の実態を改善する努力を一層強化するために、日耳鼻は「補聴器販売の在り方に関する(社)日本耳鼻咽喉科学会の基本方針」(日本耳鼻咽喉科学会ホームページ・理事会ニュース2004.9.18の8.を参照)を平成16年5月に決定しました。

 この決定を受けて、基本方針に関する要望書を日本補聴器工業会、日本補聴器販売店協会に送付して、日耳鼻の要望書に記された趣旨ならびに補聴器販売実態の改善についての諸施策に対する賛意と協力の回答を得ています。同時に、厚生労働省の補聴器に関係する各部署に、補聴器販売の在るべき体制の整備に向けた本学会の取り組みへの理解と支援を要請して、好意的な反応を得ています。さらに日本聴覚医学会に、補聴器販売業者による宣伝広告の学問的適否について検討していくことを依頼しました。

 日耳鼻としては平成17年を「管理医療機器としての補聴器元年」と位置づけて、現在、難聴者がそのコミュニケーション障害に「有効な」補聴器を「適正に」選択して使用していくための診察と医学的助言を行う補聴器相談医を、全国共通の基準で認定する体制の整備、充実に取りかかっています。

 この他の、新生児聴覚検診および嚥下障害などの当面する諸問題に対する取り組みについても随時「日本耳鼻咽喉科学会ホームページ」で報告していきますので、その十分な活用によって日耳鼻会員と理事会との連携がさらに強化されるよう改めて祈って、私の年頭の言葉とさせていただきます。

第106回通常評議員会の開催に当たって

 平成17年度の第106回通常評議員会を開催するに当たり、理事長として一言挨拶申し上げます。

 理事会は、前期理事会に引き続いて「耳鼻咽喉科という専門性の維持と強化」という目標を掲げて、この1年間も鋭意努力してきました。

 この目標に対して具体的にはまず、「会員と理事会との連携の強化」に努めています。そのために、日耳鼻ホームページによる情報の公開と伝達を行い、「理事会ニュース」を理事会の開催後に必ず掲載するようにしてきました。また、今年の3月3日は第50回「耳の日」に当たったので、特別ポスターを作製、配布するとともに、全国で行われる「耳の日」特別行事のお知らせをホームページ上に公開しました。

 次に、「耳鼻咽喉科の社会連携の強化」に努めてきました。そのために特に取り上げたのが補聴器と嚥下障害の問題です。
 補聴器については、難聴者に不利益となる事例が多く発生している、わが国の補聴器販売の実態を早急に改善することを目的として「補聴器販売の在り方に関する(社)日本耳鼻咽喉科学会の基本方針」(日耳鼻理事会ニュース2004.9.18の8を参照)を決定して、業者団体に働きかけるとともに、厚生労働省、経済産業省などに理解と支援を求めてきました。このような外部への働きかけと平行して、内部の体制固めとして日耳鼻「補聴器相談医」制度を制定して、平成17年度から発足することにしました。

 嚥下障害患者への対応は、医療のcureからcareへの推移を受けてそのニーズが増してきています。このために開始した嚥下障害講習会は第3回目を終了して、47都道府県からの受講者を集めることができました。現在、平成16年5月に出版した「EBMを用いた診療ガイドライン 作成・活用ガイド」(中山健夫著、金原出版)を基にして「嚥下障害・診療ガイドライン」を作成中で、今年度中の発行を目指しています。

 この他として、専門医試験の見直しを行っています。これは、新医師臨床研修制度の発足に伴って日耳鼻専門医の卒後研修期間が5年から6年に延長されたため、専門研修目標の見直しと、そのための研修記録簿の刷新を行ったことを受けたものです。記述式の筆記試験に加えて、多種選択問題(MCQ)を採用した新試験について検討中です。

 なお、昨年の評議員会、総会において、40年あまり経って老朽化が懸念される学会事務所を品川駅周辺のオフィスビルに移転する件が、理事会に一任されました。この件について、現事務所よりも便利なオフィスビルに6月1日から移転することにしましたので、「報告」でお知らせします。

 それでは、ただ今からこれらの事項について報告し協議いただくために、評議員会を開始いたします。

2006年の年頭に当たって

 新年明けましておめでとうございます。

 本年も、昨年来特に取り上げてきた「耳鼻咽喉科の社会連携」、なかでも補聴器と嚥下障害の課題に向けての取り組みを強化したいと願っています。

 まず補聴器について日本耳鼻咽喉科学会は、「補聴器は難聴によるコミュニケーション障害を改善、補完する医療機器である」と明確に位置づけ、欧米諸国並みに耳鼻咽喉科医師が診察して補聴器を処方するという、その在るべき姿を確立することを目指しています。このために関係省庁に理解と協力を要望すると共に、補聴器の製造販売業者および販売業者に補聴器販売の実態を改善するよう要請しています。そして、平成17年度に日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医制度を発足させ、平成17年末までに33の地方部会において補聴器相談医委嘱のための講習会が開催されました。

 今後そのニーズが増してくる嚥下障害への対応としては、嚥下障害患者に関する診療を一層充実させることを目的として嚥下障害講習会を開始し、第4回講習会を平成18年4月22日(土曜日)・23日(日曜日)に開催することにしています。これと平行して、平成16年5月に「EBMを用いた診療ガイドライン 作成・活用ガイド」(中山健夫著、金原出版)を出版し、診療ガイドラインとは「医師の傍らにあって、問題にぶつかったときにそれを解決する手助け」であるという、その目的にかなった嚥下障害診療ガイドラインの作成を急いでいます。

 2年前に発足した新医師臨床研修制度に伴って、本学会は耳鼻咽喉科専門医の卒後研修期間を5年から6年に延長し、専門研修目標の見直しと研修記録簿の改定を行いました。さらに、専門医認定試験についても筆記試験に、従来の記述式問題に加えて多肢選択問題(MCQ)を採用することにして、問題作成作業を進めています。

 これらの課題と改革はすべて、「耳鼻咽喉科という専門性の確立と強化」を目指したものであると言えます。(社)日本耳鼻咽喉科学会が掲げる、この目標に対する会員の先生方の一層のご理解とさらなるご研鑽を祈って、私の年頭のことばとさせていただきます。

第107回通常評議員会の開催に当たって

 平成17年度の第107回通常評議員会を開催するに当たって、理事長として一言ご挨拶申し上げます。

 ご存じのように、平成17年度は平成16年度に引き続いて、今期の理事会が会務を担当してきましたので、ここではこの2年間の総括という形で振り返ってみたいと思います。そのまとめは、本日配布しました「平成16・17年度各部事業報告」に記載されていますが、その冒頭に私が11項目にさらにまとめていますので、それをご覧いただきたいと思います。

 時間の関係からと、後ほど「平成17年度会務および事業報告」と題して八木副理事長に報告いただきますことから、その11項目の中の、理事会が特に努力した、ないしは努力している6項目をピックアップしてみますと、まず(3)の日耳鼻ホームページの充実、特に「理事会ニュース」の掲載が挙げられます。その目的とするのは、会員と理事会との連携を強化することであります。次に(5)の、2年前から発足した新医師臨床研修制度への学会としての対応で、専門医の受験資格を1年延長して6年にすると共に、専門研修内容と専門医認定試験の見直しを行いました。次の(6)は、今年から日耳鼻から委員を派遣する、従来のブロック会議の形式を変えて日耳鼻保険医療委員会全国協議会を発足させることです。(7)の補聴器については、左の列の最下段に書いていますように「欧米並みに耳鼻咽喉科医が診察して、補聴器を処方する」体制の確立を目指して、日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医制度をスタートさせました。その結果、現在2,943名の先生方に「補聴器相談医」の認定証をお送りしました。次の(9)の嚥下障害については、境界領域問題との関連もあって対応が急がれますが、嚥下障害講習会を4年前から開始すると共に、嚥下障害診療ガイドラインの作成と近日中の出版を急いでいます。それから、(11)の1年前からの新事務所の移転があります。これは、日耳鼻の役員、委員の先生方の、無報酬の、献身的なご尽力に学会が唯一できるお返しである、という認識から特に努力してきましたが、幸い東京で現在もっとも便利な品川駅に、極めて近接した場所に移転することができました。

 以上要するに、日耳鼻のこれらの事業は「耳鼻咽喉科、より正確に言えば耳鼻咽喉科・頭頸部外科という専門性の維持と強化」という本学会の目的を達成したいためであります。このことにつきまして評議員・参与の先生方の一層のご理解とご協力をお願いして、ただ今から評議員会を開催させていただきます。

Last update: 2022年12月7日
このページの先頭へ