一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
理事長 村上 信五

 新年明けましておめでとうございます。希望と期待を込めて、今年は明るい年になることを祈願しております。
 昨年の2月、横浜港に寄港したクルーズ船、ダイヤモンド プリンセス号から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、4月の第1波、8月の第2波、そして11月には第3波が押し寄せました。耳鼻咽喉科は鼻・口腔・咽喉頭など上気道感染症の診療を担うことから、他科に先駆けて外来診療や検査、手術に関する新型コロナウイルス対応ガイドを作成し、感染防御対策を推進してきました。その結果、全国の病院やクリニックにおいて耳鼻咽喉科からクラスターの発生はなく、COVID-19で重篤あるいはお亡くなりになられた方もいなかったことを嬉しく思います。日本耳鼻咽喉科学会から発信した多くのガイドは他の診療科やメディアから注目され、多方面で活用されており、作成にご尽力いただいた先生方に改めて感謝いたします。しかし、一方で診療の制限や待機手術の延期・中止を余儀なくされ、外来患者の受診控えも重なり、病院やクリニックの経営に甚大な影響がでています。このような事態に対応すべく、昨年の6月に発足した新執行部で10項目のワーキング(WG)を立ち上げました。それは、①関連する学会との連携強化と活性化、②他科・他職種との連携、③近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方、④耳鼻咽喉科保険診療体系見直し、⑤耳鼻咽喉科領域のリハビリテーション、⑥遠隔医療・オンライン診療、⑦インターネット講習および研修、⑧耳鼻咽喉科の社会へのアピール、⑨耳鼻咽喉科のビッグデータ一元化、⑩学会・臨床医会との連携などです。これらすべてがCOVID-19対策ではありませんが、昨年4月に設立された日本臨床耳鼻喉科医会と協力して日本耳鼻咽喉科学会が取り組む重要課題と考え活動を開始しています。
 年頭にあたり、現在直面している課題とWGの対応について報告させていただきます。解決すべき危急の課題としては、①COVID-19による耳鼻咽喉診療への影響、②学術集会や会議におけるWeb開催、③オンライン診療、④耳鼻咽喉科専攻医の減少などがあります。コロナ渦における耳鼻咽喉科診療に関しては、非接触型診療の一環として軟性・硬性ファイバースコープの感染対策用具など医療機器メーカーと共同で活用を検討しています。また、診療報酬に関しては「耳鼻咽喉科保険診療体系見直しWG」で令和4年度改正に向けて活動が始まっています。今後の耳鼻咽喉科診療は、保険診療体系の見直しだけではなく、境界領域を含めた診療拡大が重要で「近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方WG」や「耳鼻咽喉科領域のリハビリテーションWG」、「耳鼻咽喉科の社会へのアピールWG」で進められています。学術集会や講習会に関しては、COVID-19の影響で当初は開催すら危ぶまれていた日耳鼻学術講演会と秋季大会が現地とWebのハイブリッドで開催され、参加者がそれぞれ5782名、5262名という過去最高を記録しました。コロナ渦にも関わらず迅速に対応し、素晴らしい学術集会、講習会を企画・運営いただきました第121回日耳鼻学術講演会会長の西﨑和則先生、秋季大会実行委員長の武田憲昭先生ならびに中四国ブロックの実行委員の先生方に会員を代表して厚く御礼申し上げます。このようにWeb開催を併用することで、自宅での研修が可能になりCOVID-19の拡大も予防できるメリットがある一方で、現地への参加者が減少し学術講演会のテンションが上がらず、ランチョンセミナーや機器展示などのスポンサーも減り、学会の運営が経済的に大きく影響を受けます。COVID-19が終息してもWeb開催の併用は継続されると思いますので、「インターネット講習および研修WG」には、さらに効率的かつ効果的、経済的なインターネット講習および研修方法の構築を期待しています。オンライン診療に関しては、局所所見や検査が診断に重要な耳鼻咽喉科診療は不向きとされています。しかし、コロナ渦において菅義偉総理が「新IT戦略」を打ち出し、関連する各省庁もオンライン診療を強力に押し進めている現状において、この潮流に乗り遅れることは避けなければなりません。WGでは「オンライン診療の手引き(案)」を作成中で、近日中にお届けできると思います。最後に令和3年度の耳鼻咽喉科専攻医ですが例年より50人程度減少することが予測されています。理由として、研修医が耳鼻咽喉科をローテートする期間にCOVID-19が拡大し、聴覚検査や内視鏡検査などの臨床実習や手術が制限され、研修医に耳鼻科診療の魅力を伝えることができなかったこと、耳鼻咽喉科への受診患者が減少して将来性が危ぶまれたことなどが考えられます。追跡調査を行うとともに医育機関や専門研修施設と協力して専攻医のリクルートを推進したいと考えています。
 以上、現在直面している課題と日本耳鼻咽喉科学会の取り組み、進捗状況をお知らせしました。COVID-19の第3波の真っ只中ではありますが一筋の光が見えてきたように思います。「千里の道も一歩より」、「朝の来ない夜はない」を信じて一歩一歩着実に進めて行く所存ですので、会員の皆様にはより一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2021年1月5日掲載
Last update: 2022年12月7日
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