一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のこれから

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
理事長 村上 信五

 猛威を振るった新型コロナウイルスも弱毒化とワクチン接種の普及により、本年の5月8日に2類相当から5類に移行しました。それに追従するように今夏は小児の夏風邪ヘルパンギーナが大流行しています。小生自身も不徳の致すところ、学会出張中にウイルス感染に起因する劇症型心筋炎を発症し、7月6日から東京医科歯科大学救命救急センターで治療を受けております。何の前兆もなく不整脈が生じ失神、心室細動による心停止など、一時は危機的状態に陥りましたが、奇跡的に救命され順調に回復に向かっております。今思うに、「あなたには現世での仕事が残っている。あの世に行くのはまだ早い。」と神様が三途の川から引き上げてくれた気がしてなりません。
 私が理事長を拝命して3年2ヵ月経ちますが、丁度、新型コロナウイルス感染症の流行と重なります。耳鼻咽喉科を受診する患者が激減し、クリニックも病院も大打撃を受けました。そのため、当初の2年間は、withコロナに対応した学術講演会や講習会のハイブリッド開催、診療における感染対策や非接触診療を模索し、診療の在り方や診療拡大を検討するワーキンググループを立ち上げました。また、新聞は読まない、TVは見ない、メールさえ持たない若者の行動を鑑み、YouTubeやTwitterなどのSNSを活用して、学会からメッセージを発信しました。この3年余コロナ禍が、耳鼻咽喉科頭頸部外科にとって失われた空白期間になるのか、未来を展望する有益な期間になるのか、検証すると同時にアフターコロナに向けて対策を練る必要があります。早急に取り組むべき課題は、①若手医師の教育と育成、②診療拡大とチーム医療、③新規医療の開発と実用化を考えています。
 耳鼻咽喉科頭頸部外科の将来を担う若手医師の教育と育成は最重要課題です。新専門医制度以来、自分で耳鼻咽喉科の基本的検査を行わない専攻医が増えています。その結果、診断の誤りや検査技師の教育、指導ができないなどの弊害が出ています。新専攻医には日耳鼻や関連する学会が開催する実技講習会の受講を専門医試験の受験資格にすることになりました。また、「耳鼻咽喉科教育・育成賞」(鈴鹿有子基金)に続き、激減している海外留学を支援するために本年度から「海外留学支援制度」を設けました。詳細はホームページをご覧いただければと思いますが、本制度は故奥田 稔先生の「研究・教育・育成基金」と故曽田豊二先生の奨学基金で運営します。
 診療拡大とチーム医療に関しては、嚥下障害やめまい、顔面神経麻痺、甲状腺腫瘍、口腔癌など境界領域の患者が当たり前のように耳鼻咽喉科を初診するよう国民、社会にアピールする必要があります。そのためには関連する学会と連携して指導医や認定医、相談医などの資格制度も有用と考えています。また、耳鼻咽喉科頭頸部領域はリハビリテーションの宝庫と言っても過言ではありません。嚥下障害、めまい、顔面神経麻痺、聴覚、音声障害、嗅覚・味覚障害、いずれもリハビリテーションの対象になります。リハ科や言語聴覚士とのチーム医療を推進したいと考えております。
 新規医療の開発と実用化に関しては、日本学術振興会の科研費や厚労科研費、AMEDなど競争的外部資金の獲得は必要不可欠です。日耳鼻としても医療機器開発や基礎・臨床研究のseedsを探してサポートする必要があると考えています。同時に関連省庁との人的交流も重要で、その橋渡しをするのが医系技官ですが、耳鼻咽喉科医の医系技官は極めて少ないのが現状です。また、新規医療を実用化するためには、厚労省やPMDA、中央社会保険医療審議会(中医協)の審査をパスする必要があります。定期的な診療報酬改定も含め、臨床医会と協力して、日本医師会や中医協にアプローチしていきたいと考えていますので、ご支援、ご協力いただけますようお願い申し上げます。

 

2023年7月28日掲載

Last update: 2024年1月9日
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