一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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学会について

18代 理事長挨拶

18代理事長 村上 信五

年頭の挨拶

 このたびの「令和6年能登半島地震」により被災されました会員、ご家族の皆様には心よりお見舞い申し上げます。羽田空港における飛行機火災事故も含め、新年から天災や事故が多発しておりますが、会員の皆様には健康で希望に満ちた明るい年になることを祈念しております。小生も昨年夏には劇症型心筋炎を患い療養しておりましたが、お陰様で全快し復帰しております。ご心配をおかけしました。
 さて、2020年2月に到来した新型コロナウイルスですが、感染拡大を繰り返した後に収束し、昨年5月8日に指定感染症2類相当から5類に引き下げられました。第1波は致死率が高く、コロナで人類は滅亡かと悲壮感が漂いましたが、見識あるウイルス学者は当初から、ウイルスはいずれ弱毒化して普通の風邪になることを予言していました。有史以前から繰り返してきた人類とウイルスの闘いと共存の歴史の一端を垣間見ることができました。
 耳鼻咽喉科にとってコロナ禍は、長くて暗いトンネルでしたが、明るい話題も見えてきました。そのひとつは、昨年11月、横浜で開催した第37回日耳鼻秋季大会の際に韓国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会とMOUを提携したことです。MOUはMemorandum of Understandingの略称で、基本合意書あるいは了解覚書と言って、学術と人的交流を通して両学会の発展を促すための合意書です。日本と韓国とは1986年から36年間にわたり Japan-Korea Joint Meetingを交互に開催してきましたが、MOU提携を機に両学会の交流がより活発になることを期待しています。もうひとつの明るい話題は海外留学支援制度ができたことです。新型コロナで海外渡航が厳しく制限され、さらに円安が急速に進行したことで、海外留学を断念したり、希望さえ持てない若手医師が増えていました。将来の国際化が危惧されたため、早速、海外留学推進・支援WGを立ち上げ、財源を探していたところ、日本医科大学の奥田稔名誉教授が残された私財からご寄付いただけることになりました。基金名を「奥田 稔 研究・教育・育成基金」とし、曽田豊二基金と合わせて海外留学を含めた若手医師の研究・教育・育成に幅広く活用させていただきたいと考えています。尚、海外留学の支援額は1人500万円を限度に今年度は5名に授与しました。
 コロナ禍は厳しい試練でしたが学術集会や診療の在り方を見直す機会にもなりました。耳鼻咽喉科医療のあり方や医療体制、医師の教育・育成を展望し、アフターコロナに向けた「耳鼻咽喉科頭頸部外科医療の未来プラン」を策定しました。学会と臨床医会が取り組むべき中長期的な課題と目標を挙げています。具体的な内容はホームページの会員マイページに掲載しておりますので、是非、ご覧いただければと思います。

1.耳鼻咽喉科頭頸部外科の専門性をより発揮できる診療体制の構築
2.花粉症対策の推進
3.耳鼻咽喉科関連フレイル対策の推進
4.新興感染症対策の推進
5.在宅医療の推進と診療報酬の再評価
6.周産期・小児医療への積極的な関与
7.ワクチン接種の推進
8.学校医の柔軟な運用
9.耳鼻咽喉科救急医療の充実と再構築
10.全世代を通しての難聴対策「難聴対策基本法」の制定
11.働き方改革への対応
12.かかりつけ医としての専門性の確立
13.医療DXの推進
14.耳鼻咽喉科専攻医のリクルート
15. 耳鼻咽喉科医の教育と育成

 これら未来プランの実現には、関係省庁の理解や予算、財源の確保が欠かせません。特に新規医療の開発や医療システムの実用化にはオールジャパン体制で取り組む必要があり「日耳鼻オールジャパンプロジェクト」を立ち上げました。その嚆矢として、本年7月からACジャパン支援キャンペーンを活用して難聴の啓発を行います。国民に難聴とそのリスクを啓発し、適切な補聴により、ヒアリングフレイルから認知症、要介護へのプロセスが防止できることを期待しています。めまい・平衡障害や嚥下障害、嗅覚・味覚障害に関してもフレイル対策を進め、高齢化社会における国民のウエルビーイングの向上に貢献したいと考えています。
 世間を騒がせた芸能プロダクションも社名を新たにSTARTO ENTERTAINMENTに改称しました。アフターコロナに向けた耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の取り組みも新たなチャレンジになります。プランが実現した暁には明るい未来が待っています。START ENT!専門性を高め、診療を拡大し、国民の福祉と社会に貢献できる耳鼻咽喉科頭頸部外科を目指しますので、会員の皆様にもご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2024年1月9日掲載

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のこれから

 猛威を振るった新型コロナウイルスも弱毒化とワクチン接種の普及により、本年の5月8日に2類相当から5類に移行しました。それに追従するように今夏は小児の夏風邪ヘルパンギーナが大流行しています。小生自身も不徳の致すところ、学会出張中にウイルス感染に起因する劇症型心筋炎を発症し、7月6日から東京医科歯科大学救命救急センターで治療を受けております。何の前兆もなく不整脈が生じ失神、心室細動による心停止など、一時は危機的状態に陥りましたが、奇跡的に救命され順調に回復に向かっております。今思うに、「あなたには現世での仕事が残っている。あの世に行くのはまだ早い。」と神様が三途の川から引き上げてくれた気がしてなりません。
 私が理事長を拝命して3年2ヵ月経ちますが、丁度、新型コロナウイルス感染症の流行と重なります。耳鼻咽喉科を受診する患者が激減し、クリニックも病院も大打撃を受けました。そのため、当初の2年間は、withコロナに対応した学術講演会や講習会のハイブリッド開催、診療における感染対策や非接触診療を模索し、診療の在り方や診療拡大を検討するワーキンググループを立ち上げました。また、新聞は読まない、TVは見ない、メールさえ持たない若者の行動を鑑み、YouTubeやTwitterなどのSNSを活用して、学会からメッセージを発信しました。この3年余コロナ禍が、耳鼻咽喉科頭頸部外科にとって失われた空白期間になるのか、未来を展望する有益な期間になるのか、検証すると同時にアフターコロナに向けて対策を練る必要があります。早急に取り組むべき課題は、①若手医師の教育と育成、②診療拡大とチーム医療、③新規医療の開発と実用化を考えています。
 耳鼻咽喉科頭頸部外科の将来を担う若手医師の教育と育成は最重要課題です。新専門医制度以来、自分で耳鼻咽喉科の基本的検査を行わない専攻医が増えています。その結果、診断の誤りや検査技師の教育、指導ができないなどの弊害が出ています。新専攻医には日耳鼻や関連する学会が開催する実技講習会の受講を専門医試験の受験資格にすることになりました。また、「耳鼻咽喉科教育・育成賞」(鈴鹿有子基金)に続き、激減している海外留学を支援するために本年度から「海外留学支援制度」を設けました。詳細はホームページをご覧いただければと思いますが、本制度は故奥田 稔先生の「研究・教育・育成基金」と故曽田豊二先生の奨学基金で運営します。
 診療拡大とチーム医療に関しては、嚥下障害やめまい、顔面神経麻痺、甲状腺腫瘍、口腔癌など境界領域の患者が当たり前のように耳鼻咽喉科を初診するよう国民、社会にアピールする必要があります。そのためには関連する学会と連携して指導医や認定医、相談医などの資格制度も有用と考えています。また、耳鼻咽喉科頭頸部領域はリハビリテーションの宝庫と言っても過言ではありません。嚥下障害、めまい、顔面神経麻痺、聴覚、音声障害、嗅覚・味覚障害、いずれもリハビリテーションの対象になります。リハ科や言語聴覚士とのチーム医療を推進したいと考えております。
 新規医療の開発と実用化に関しては、日本学術振興会の科研費や厚労科研費、AMEDなど競争的外部資金の獲得は必要不可欠です。日耳鼻としても医療機器開発や基礎・臨床研究のseedsを探してサポートする必要があると考えています。同時に関連省庁との人的交流も重要で、その橋渡しをするのが医系技官ですが、耳鼻咽喉科医の医系技官は極めて少ないのが現状です。また、新規医療を実用化するためには、厚労省やPMDA、中央社会保険医療審議会(中医協)の審査をパスする必要があります。定期的な診療報酬改定も含め、臨床医会と協力して、日本医師会や中医協にアプローチしていきたいと考えていますので、ご支援、ご協力いただけますようお願い申し上げます。

2023年7月28日掲載

年頭の挨拶

 新年明けましておめでとうございます。本年は会員の皆様にとって明るい、希望に満ちた年になることを祈念しております。
 昨年は大変残念な出来事がありました。第16代理事長で名誉会員の久 育男先生が昨年の10月20日に逝去されました。先生は平成26年5月に日耳鼻理事長に就任し、日耳鼻の組織編成はじめ新専門医制度や専門医講習会、日耳鼻総会・学術講演会の開催形式などに着手し、精力的に数々の改革をされました。現在の日耳鼻組織や総会・学術講演会、秋季大会の大枠は久理事長の在任中に築かれたものです。先日、ご自宅を弔問いたしましたが、先生のご遺影の前には宿題報告冊子と愛用された眼鏡が置かれていました。理事長時代の先生と喉頭の研究、臨床に捧げた先生の生涯が思い起こされました。先生の長年にわたる本学会へのご尽力と貢献に心より感謝し、ご冥福をお祈り申し上げます。
 さて、2020年2月にアウトブレイクした新型コロナウイルス感染症ですが、もう3年が経過しました。その間、ウイルスは変異を繰り返し、現在は弱毒化したものの感染力の強いオミクロン株になり、昨年12月には第8波が到来しました。この3年間、耳鼻咽喉科診療は甚大な影響を受け、学術集会や講習会は現地とWebのハイブリッド開催がルーチン化しました。そして、「コロナに屈しない耳鼻咽喉科頭頸部外科」をモットーに、感染対策は勿論、学会名を改称し、SNSを活用して耳鼻咽喉科頭頸部外科をアピールするとともに、診療体系を見直して令和4年度の診療報酬改正に繋げました。また、リハビリテーションを推進するために「耳鼻咽喉科頭頸部外科領域のリハビリテーション医学・医療テキスト」を発刊し、他科・他職種との連携を強化しました。
 新型コロナ感染症は第8波の収束を見込んで、2類から5類へ変更することが検討されています。弱毒化と国産初の経口抗ウイルス薬の開発が後押しになっていますが、われわれもafterコロナ時代への対応が急がれます。耳鼻咽喉科頭頸部外科の明るい未来のため、取り組むべき課題の3本柱を、①専攻医・専門医の教育と育成、②診療拡大と診療改革、③新規医療の開発と実用化としました。そして、これらの課題を遂行するために以下の15ワーキンググループを立ち上げました。①日耳鼻学術講演会・秋季大会のあり方に関するWG、②専攻医教育WG、③専門医育成・活用WG、④働き方改革に関するWG、⑤専門医認定試験改善WG、⑥海外留学推進・支援WG、⑦近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方WG、⑧耳鼻咽喉科頭頸部外科リハビリテーションWG、⑨耳鼻咽喉科医療DXWG、⑩新規医療の開発と実用化推進WG、⑪ヘッドホン・イヤホン難聴対策WG、⑫補聴器適正普及WG、⑬言語聴覚士雇用促進WG、⑭HPV 関連がんとHPVワクチンに関するWG、⑮2025年デフリンピック支援WG。
 一昨年の学会名改称は、耳・鼻・咽・喉だけでなく、頭頸部疾患における耳鼻咽喉科頭頸部外科医の専門性を国民、社会にアピールすることが目的でした。同時にわれわれ自身も口腔がんや甲状腺腫瘍、嚥下障害、睡眠時無呼吸症候群などに興味を持って研鑽を積み、積極的に診療に携わる必要があります。そして、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会には関連する15学会と日本臨床耳鼻咽喉科医会という強力なパートナーがあります。お互いの連携を強固にしてafterコロナ時代を見据えた諸々の課題に取り組みますので、会員の皆様にもご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2023年1月5日掲載

Afterコロナ時代に向けての新たな取り組み

 平成30年5月の総会において理事長に再選され、日耳鼻の2年間のかじ取りを任されました。さらなる魅力に溢れた学会つくりを目指します。
 本学会は、総会員約11000名、専門医約8800名を有し、関連する学会は16を数えます。幅広い領域の医学・医療の発展に貢献していることが特筆すべき特徴であり、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学に関し国民に良質な医療を提供するとともに、活発な国際交流を展開し、学術の振興と生涯学習も強く推進しております。これら学術的貢献に加え、学校保健、成人老年・乳幼児における福祉医療、保険医療などの社会的課題の解決にも22の委員会を中心として相互に機能的に連携しながら、健全な学会運営と社会貢献のために積極的に活動しています。
 耳鼻咽喉科・頭頸部外科は、五感のうち、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を担う幅広い領域にわたる大きな役割を持つとともに、口腔・咽喉頭の腫瘍を始めとした頭頸部領域疾患の機能再建外科(発声・嚥下など)を含め、高頻度・多様な疾患を治療し、また年齢的にも乳幼児から高齢者までを対象とする幅広い診療科であります。
 超高齢・長寿社会における高齢者の難聴、バランス感覚や嗅覚・味覚障害など感覚器機能の低下や嚥下機能の障害は、QOL・ADL、認知機能に大きく影響します。学会は、これら社会的問題の予防、改善に向けて大きな役割を果たすことが期待されています。
 耳鼻咽喉科学という学問・診療体系は世界に先駆けて、日本で生まれた歴史があります。欧州の留学から帰国した金杉英五郎先生(本学会の初代会頭)は、明治26年(1893年)、欧州において各々独立していた耳科、鼻・咽頭科 、喉頭科 の3つの診療科を一つにまとめ耳鼻咽喉科学という学問体系を作り、日本耳鼻咽喉科学会の嚆矢となる“東京耳鼻咽喉科会”を創立しました。そして、学術誌“耳鼻咽喉科雑誌”を創刊し、現在の日耳鼻会報の基礎をつくりました。以来125年の長い歴史を刻んでいます。
 125年間にわたり意欲に溢れた先人の先生方の努力で、本学会は着実な発展を成し遂げてきました。さらに魅力ある耳鼻咽喉科に向けて、先端研究の推進、高度・先進医療の開発・実践への協力など「学術の振興」、「良質な専門医の育成」と「信頼できる医療の提供」との三本柱の強化に加え、高齢社会への貢献、女性医師参画の更なる推進を目指します。また安定的で活動的な学会運営のための財務基盤の強化を始め、日耳鼻運営に関する山積する既存の課題に対し、スピーディな改革を行います。
 大学病院、基幹病院と診療所がそれぞれの機能・役割を果たし、相互に補完しあいながら、境界領域の診療科とも有機的に連携し医療ネットワークを構築してゆきます。全国的な医会組織も立ち上がる状況の中、学会、地方部会と医会の密接な連携は、地域医療(救急医療、在宅医療、検診や学校保健など福祉医療など)の充実を含め、信頼される医療体制の実現のために必要不可欠です。変化する環境に応じた国民の保健・医療・福祉へ貢献を達成すべく、次の150周年に向けて、さらに信頼される耳鼻咽喉科をめざして学会としての重要課題に積極的に対処して参りますので、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願い致します。

2022年7月14日掲載

年頭の挨拶

 新年明けましておめでとうございます。希望と期待を込めて、本年は明るい年になることを祈願しております。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は断続的に感染拡大を繰り返し、2年間で5度も大波が押し寄せました。そして今、オミクロン型という得体の知れない超変異株が第6波の脅威となっています。このようなコロナ禍において、昨年は東京オリンピック・パラリンピック2020が開催され、大谷翔平選手が大リーグでMVPに輝くなど明るい話題もありました。また、日本耳鼻咽喉科学会にとっては日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に学会名を改称する記念の年になりました。
 さて、COVID-19は耳鼻咽喉科の学術集会や講習会、診療に甚大な影響を及ぼし、学術集会のあり方や従来の診療体系を見直す契機になりましたが、これらの改革の推進力となっているのが新たに立ち上げたワーキングです。「関連する学会との連携強化・活性化WG」では、各学会の活動状況を調査して日耳鼻との具体的な連携強化を図っています。「他科・他職種との連携WG」では一昨年に日本歯科学会との間で合意を交わした「嚥下障害診療に関する耳鼻咽喉科との歯科の連携に関する提言」を検証し、更なる連携について意見交換を行いました。「近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方WG」では、境界領域における診療の実態調査を行い、拡大戦略を練っています。「耳鼻咽喉科保険診療体系見直しWG」では臨床医会と協力してwithコロナ時代に適応した保険診療体系を考案し、令和4年度診療報酬改定に向け関係各所に理解を求めています。「耳鼻咽喉科領域のリハビリテーションWG」では、日本リハビリテーション医学会教育推進機構と合同で「耳鼻咽喉科頭頸部外科領域のリハビリテーション医学・医療テキスト」を作成しています。日本リハビリテーション医学会や日本言語聴覚士協会、日本理学療法士協会の監修も受け、標準かつ職種横断的なテキストが出来上がるのを楽しみにしています。「遠隔医療・オンライン診療WG」では、早々に「日本耳鼻咽喉科オンライン診療の案内」を作成し公開しました。「インターネット講習および研修WG」では、学術集会・講習会の共通オンラインプラットフォームの作成に取り組み、まもなく会員の皆様に紹介できる予定です。「耳鼻咽喉科の社会へのアピールWG」では、「耳鼻咽喉科月間(3月)」と「頭頸部外科月間(7月)」を制定し、日耳鼻公式YouTubeチャンネルやTwitterを活用して耳鼻咽喉科を社会にアピールしています。「耳鼻咽喉科のビッグデータ一元化WG」では、最初の取り組みとして2年毎の「通常調査」をオンラインで実施しました。各施設のデータをオンラインで直接頂くことで、地方部会の負担が減ると同時に地域により温度差のあったデータがより正確に収集できるようになりました。「学会・臨床医会との連携WG」では、臨床医会との有機的な連携を進めています。このように、新規10ワーキングは既存の各種委員会と協力して少しずつ成果を上げております。
 昨年の2021年流行語大賞に大谷翔平選手の「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれました。大谷選手のような超スーパー二刀流は至難ですが、会員各位が境界領域も含め、少なくとも2つの臨床で専門性を持って診療をすることが耳鼻咽喉科の診療拡大に繋がると考えています。関連する学会とも連携し、「リアル二刀流/耳鼻科医オンパレード」を推進したいと考えていますので、会員の皆様にはより一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2022年1月5日掲載

耳鼻咽喉科学会から耳鼻咽喉科頭頸部外科学会へ、更なる飛躍を!

 令和3年5月12日の社員総会において、(一社)日本耳鼻咽喉科学会は名称を(一社)日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に改称しました。学会名改称の背景には、欧米の先進国ではOtorhinolaryngologyにHead and Neck Surgeryが付記されていること、そして、わが国においても大学などの医育機関の72%で「耳鼻咽喉科頭頸部外科」あるいは「耳鼻咽喉・頭頸部外科」が講座や診療科の名称として使用されている現状がありました。歴史を振り返ると、日本耳鼻咽喉科学会は明治26年(1893年)、ドイツ留学を終えて帰国した金杉英五郎先生が有志7名で結成した「東京耳鼻咽喉科会」に遡ります。「東京耳鼻咽喉科会」は4年後の明治30年に「大日本耳鼻咽喉科会」に改称され、昭和18年まで47年間継承されましたが、第二次世界大戦後の昭和22年(1947年)に現在の「日本耳鼻咽喉科学会」に改称されました。「日本耳鼻咽喉科学会」は当初は任意団体でしたが昭和28年(1953年)に法人化して社団法人に、平成24年(2012年)には一般社団法人になり、今回、74年振りに「(一般社団法人)日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」に改称されました。米国は日本に遅れること3年、1896年に「Western Ophthalmological, Otological, Laryngological and Rhinological Association」が設立されましたが、1981年に眼科と分かれて「American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に改称しており、日本は40年も遅れたことになります。
 学会名の改称はホームページに掲載して公表しましたが、6月23日に(株)メディカルノートを介してYahooニュースにも紹介されました。Yahooサイトには掲載当日21118件、4日後には26805件と、学会会員の2倍を超える閲覧(PV)がありました。メディカルノートは医療情報の検索サイトで、我々と協力して国民に正しい医療情報を発信することで合意し、今年の4月26日に連携協定を結んだばかりですが、この3ヵ月間に「学会名の改称」はじめ、「耳鼻咽喉科診療の認知度アンケート調査」、「新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害の全国調査研究」などをYahooニュースのIT・科学欄に紹介しています。このように、今回の学会名改称の最大の目的は、我々の診療や研究を国民と社会にアピールすることにあります。学会の礎が築かれて約130年間、耳鼻咽喉科医は耳・鼻・咽喉頭のみならず頭頸部領域の診療と研究に携わってきました。しかし、耳鼻咽喉科医が、みみ・はな・のどの診療を行っていることは十分認識されていても、頭頸部癌はじめ、めまいや顔面神経麻痺、嚥下障害、睡眠障害を専門に診療していることの認知度は低いのではないでしょうか。昨年「耳鼻咽喉科を社会にアピールするWG」が立ち上がり、ホームページは勿論、Twitter やYouTube公式チャンネルを開設し、耳鼻咽喉科診療の幅広い専門性をアピールしています。そして、7月27日が「世界頭頸部がんの日」ということから、7月を「頭頸部外科月間」とし、これまでの「耳の日(3月3日)」と「鼻の日(8月7日)」は3月に「耳鼻咽喉科月間」として統合し、各地方でイベント開催することになりました。3月の「耳鼻咽喉科月間」には、耳・鼻・咽喉頭疾患だけでなく、めまいや顔面神経麻痺、嚥下障害、睡眠障害を取り上げ、また、7月の「頭頸部外科月間」には舌がんや口腔がん、甲状腺がんなど、まだ認知度の低い耳鼻咽喉科疾患を取り上げていただきますようお願いいたします。
 「名は体を表す」と言いますが、名実共に「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」に改称したことを契機に、耳・鼻・咽喉頭・頭頸部領域の診療における幅広い専門性を国民、社会にアピールし、耳鼻咽喉科診療の拡大を推進したいと考えています。会員の皆様には明るい耳鼻咽喉科の未来のために、より一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2021年8月17日掲載

年頭の挨拶

 新年明けましておめでとうございます。希望と期待を込めて、今年は明るい年になることを祈願しております。
 昨年の2月、横浜港に寄港したクルーズ船、ダイヤモンド プリンセス号から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、4月の第1波、8月の第2波、そして11月には第3波が押し寄せました。耳鼻咽喉科は鼻・口腔・咽喉頭など上気道感染症の診療を担うことから、他科に先駆けて外来診療や検査、手術に関する新型コロナウイルス対応ガイドを作成し、感染防御対策を推進してきました。その結果、全国の病院やクリニックにおいて耳鼻咽喉科からクラスターの発生はなく、COVID-19で重篤あるいはお亡くなりになられた方もいなかったことを嬉しく思います。日本耳鼻咽喉科学会から発信した多くのガイドは他の診療科やメディアから注目され、多方面で活用されており、作成にご尽力いただいた先生方に改めて感謝いたします。しかし、一方で診療の制限や待機手術の延期・中止を余儀なくされ、外来患者の受診控えも重なり、病院やクリニックの経営に甚大な影響がでています。このような事態に対応すべく、昨年の6月に発足した新執行部で10項目のワーキング(WG)を立ち上げました。それは、①関連する学会との連携強化と活性化、②他科・他職種との連携、③近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方、④耳鼻咽喉科保険診療体系見直し、⑤耳鼻咽喉科領域のリハビリテーション、⑥遠隔医療・オンライン診療、⑦インターネット講習および研修、⑧耳鼻咽喉科の社会へのアピール、⑨耳鼻咽喉科のビッグデータ一元化、⑩学会・臨床医会との連携などです。これらすべてがCOVID-19対策ではありませんが、昨年4月に設立された日本臨床耳鼻喉科医会と協力して日本耳鼻咽喉科学会が取り組む重要課題と考え活動を開始しています。
 年頭にあたり、現在直面している課題とWGの対応について報告させていただきます。解決すべき危急の課題としては、①COVID-19による耳鼻咽喉診療への影響、②学術集会や会議におけるWeb開催、③オンライン診療、④耳鼻咽喉科専攻医の減少などがあります。コロナ渦における耳鼻咽喉科診療に関しては、非接触型診療の一環として軟性・硬性ファイバースコープの感染対策用具など医療機器メーカーと共同で活用を検討しています。また、診療報酬に関しては「耳鼻咽喉科保険診療体系見直しWG」で令和4年度改正に向けて活動が始まっています。今後の耳鼻咽喉科診療は、保険診療体系の見直しだけではなく、境界領域を含めた診療拡大が重要で「近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方WG」や「耳鼻咽喉科領域のリハビリテーションWG」、「耳鼻咽喉科の社会へのアピールWG」で進められています。学術集会や講習会に関しては、COVID-19の影響で当初は開催すら危ぶまれていた日耳鼻学術講演会と秋季大会が現地とWebのハイブリッドで開催され、参加者がそれぞれ5782名、5262名という過去最高を記録しました。コロナ渦にも関わらず迅速に対応し、素晴らしい学術集会、講習会を企画・運営いただきました第121回日耳鼻学術講演会会長の西﨑和則先生、秋季大会実行委員長の武田憲昭先生ならびに中四国ブロックの実行委員の先生方に会員を代表して厚く御礼申し上げます。このようにWeb開催を併用することで、自宅での研修が可能になりCOVID-19の拡大も予防できるメリットがある一方で、現地への参加者が減少し学術講演会のテンションが上がらず、ランチョンセミナーや機器展示などのスポンサーも減り、学会の運営が経済的に大きく影響を受けます。COVID-19が終息してもWeb開催の併用は継続されると思いますので、「インターネット講習および研修WG」には、さらに効率的かつ効果的、経済的なインターネット講習および研修方法の構築を期待しています。オンライン診療に関しては、局所所見や検査が診断に重要な耳鼻咽喉科診療は不向きとされています。しかし、コロナ渦において菅義偉総理が「新IT戦略」を打ち出し、関連する各省庁もオンライン診療を強力に押し進めている現状において、この潮流に乗り遅れることは避けなければなりません。WGでは「オンライン診療の手引き(案)」を作成中で、近日中にお届けできると思います。最後に令和3年度の耳鼻咽喉科専攻医ですが例年より50人程度減少することが予測されています。理由として、研修医が耳鼻咽喉科をローテートする期間にCOVID-19が拡大し、聴覚検査や内視鏡検査などの臨床実習や手術が制限され、研修医に耳鼻科診療の魅力を伝えることができなかったこと、耳鼻咽喉科への受診患者が減少して将来性が危ぶまれたことなどが考えられます。追跡調査を行うとともに医育機関や専門研修施設と協力して専攻医のリクルートを推進したいと考えています。
 以上、現在直面している課題と日本耳鼻咽喉科学会の取り組み、進捗状況をお知らせしました。COVID-19の第3波の真っ只中ではありますが一筋の光が見えてきたように思います。「千里の道も一歩より」、「朝の来ない夜はない」を信じて一歩一歩着実に進めて行く所存ですので、会員の皆様にはより一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2021年1月5日掲載

ご挨拶

 令和2年6月8日に開催された日本耳鼻咽喉科学会理事会において第18代日本耳鼻咽喉科学会理事長に選出され2年間の運営を任されました。大変光栄に存じますとともに身の引き締まる思いがしております。
 日本耳鼻咽喉科学会は1893(明治26)年に設立され、日本医学会連合に加盟する医学系学会としては最も長い127年の歴史を持ち、関連16学会、会員11,000名余を有する学術団体です。耳科、鼻科、咽喉頭科そして頭頸部腫瘍領域の研究と教育、医療と福祉を担う診療科で世界的には耳鼻咽喉・頭頸部外科と称されています。領域が多岐に亘り、各々の専門性を高める必要性から多くの研究会が発足し、関連16学会のベースになっています。前身の研究会を含め60年以上の歴史を持つ学会もあり、日本耳鼻咽喉科学会は関連学会と共に歩んできたと言えます。また、令和2年4月には(一社)日本臨床耳鼻咽喉科医会が設立され、耳鼻咽喉科の医療と福祉がより充実し、発展することが期待されます。
 このように発展し続けてきた耳鼻咽喉科ですが、この度の新型コロナウイルス感染症の拡大で、最も甚大な影響を受けた診療科のひとつになりました。上気道疾患を扱うがゆえの宿命でもありますが、耳鼻咽喉科診療の在り方を見直す時期がきているようにも思います。また、新型コロナウイルス感染症は学会運営や学術集会の開催にも多大な影響を与えました。このような状況において診療や学会、学術集会の在り方を見直し、withコロナ、afterコロナ時代に向けての対応と改革が急がれます。新執行部では解決すべき危急の課題として以下の10テーマをワーキングとして新たに立ち上げました。①関連する学会との連携強化と活性化、②他科・他職種との連携、③近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方、④耳鼻咽喉科保険診療体系見直し、⑤耳鼻咽喉科領域のリハビリテーション、⑥遠隔医療・オンライン診療、⑦インターネット講習および研修、⑧耳鼻咽喉科の社会へのアピール、⑨耳鼻咽喉科のビッグデータ一元化、⑩学会・臨床医会との連携。如何に多くの課題が新型コロナウイルス感染症に関連しているかご理解いただけると思いますが、非常事において最も大切なことは、学会と会員が一丸となって同じ方向を目指して行動することではないでしょうか。
 耳鼻咽喉科の歴史は感染症克服の歴史でもあります。そして、ピンチは変革のチャンスでもあります。「この世に生き残るものは、最も大きく強いものでも頭の良いものでもなく、世の中の変化に対応できるもの」というダーウインの教訓から、コロナ時代に迅速に適応することが生き残るための施策と考えます。日本耳鼻咽喉科学会は関連学会および日本臨床耳鼻咽喉科医会との連携を強化して、この難関を乗り越えたいと思います。会員の皆様には明るい耳鼻咽喉科の未来のために、より一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2020年7月2日掲載
Last update: 2024年7月16日