一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気

耳・鼻・のど・くび:どの部位にも起こる病気

かぜ(かぜ症候群)

 私達が呼吸する際、空気の通り道は気道と呼ばれ、上気道(鼻、咽頭、喉頭)と下気道(気管、気管支、細気管支、肺胞)に分けられます。かぜ症候群とは、主にウイルス感染によって上気道に起こる急性炎症の総称で、具体的には急性の鼻炎、咽頭炎喉頭炎などをいいます。症状は、局所的にはくしゃみ、鼻みず、鼻づまり、のどの痛み、せき、たん、声がれなどであり、全身的には発熱、頭痛、関節痛、さらに下痢、腹痛などの消化器症状を伴うこともあります。
 かぜは放置しても自然に治ることが多いのですが、こじれると気管・気管支炎、急性副鼻腔炎急性中耳炎滲出性中耳炎などの合併症を起こします。
 かぜは、主に上気道の炎症で、合併症も耳、鼻、のどに関するものが多いので、本来耳鼻咽喉科医が「かぜの専門医」といえます。耳鼻咽喉科の利点は、病気の広がりや程度を眼で確認でき、さらに、薬だけでなく、鼻やのどの処置、ネブライザーなどで患部を直接治療できる点です。咽頭痛は軽度で、高熱が続いたり呼吸困難を呈してくれば肺炎などの可能性もありますので、内科や小児科も受診してください。

かぜ(かぜ症候群)

心身症

 「心身症」とは、心理社会的要因または環境からの精神的ストレスが原因となって発症する身体疾患の事です。現代人は日常的に何かとストレスに晒されていますが、その許容量を超えた場合には耐えきれなくなり、心身のバランスを崩してしまいます。耳鼻咽喉科では以下の症状を診察します。
 耳鳴難聴、めまい、嗅覚味覚異常、舌痛症(舌がピリピリして痛い)、咽喉頭異常感症(のどがおかしい、つまる)、口腔乾燥感症、構音・発声障害(うまく話せない、声がでない)などはストレスと密接に関連しています。また、メニエール病突発性難聴、心因性難聴などストレスが影響する病気もあります。
 それぞれの疾患に対する薬物治療だけでなく、ストレスへの対処や生活改善(食事、睡眠、運動習慣)の必要がある場合が多くなります。

心身症

外傷

 耳鼻咽喉科では耳・鼻・のどの病気だけでなく、顔面・頸部に生じた外傷に対しても治療を行います。顔面・頸部には重要な神経・血管などの構造物が多く存在します。受傷の状態によっては視覚・聴覚・嗅覚などの機能障害を起こし、重篤な後遺症を残す場合があります。以下に代表的な外傷を挙げます。このような状態の場合は専門的な処置が必要となりますので耳鼻咽喉科を必ず受診するようにしましょう。


  • 外傷性鼓膜穿孔:誤って耳かきなどを深く入れてしまった場合などに起こります。鼓膜が破れて聞こえが悪くなったり、めまいを感じたりする場合があります。
    耳介血腫:柔道やレスリングを行っている方に多くみられます。耳介への圧迫刺激が繰り返されて皮下に血液がたまり、耳介が腫れてしまう状態です。
  • 鼻・上顎
    鼻骨骨折:ボールなどがぶつかり鼻の形をつくっている骨が折れることで鼻が変形してしまいます。(矢印)
    眼窩(がんか)吹き抜け骨折:眼窩という眼球が入っている部位の骨折です。眼球の位置が変位したり、目の周りの筋肉が骨に挟まれることによってものが二重に見えたりします。
    頬骨(きょうこつ)骨折:頬の骨が折れた場合、顔面の変形だけでなく開口障害を起こすことがあります。
  • のど
    咽頭外傷:アイスの棒や割りばしなどをくわえたまま転倒し、のどを傷つけてしまうことがあります。傷が深い場合は脳の損傷を起こすことがあるので注意が必要です。
    喉頭外傷:のどを自動車のハンドルで強打した場合や、けんかなどで甲状軟骨(のどぼとけ)の骨折が起こります。出血や骨折の程度によっては呼吸困難を生じることもあり、早急な対処が必要となります。

ここに挙げた以外にも様々な外傷がありますが、目や歯に障害がおよぶものは眼科や歯科・口腔外科と共同で診療が必要となります。また、顔面の大きな傷、瘢痕などに対しては形成外科と共同での診療が必要となる場合があります。

鼻骨骨折

異物

 体内に誤って物が入ってしまい取れなくなってしまったものを異物といいますが、耳鼻咽喉科では、耳(外耳道異物)、鼻(鼻内異物)、のど(咽頭異物、喉頭異物)、食道異物気管支異物などの異物をあつかっています。
 耳の異物ではおもちゃの鉄砲の玉、ビーズ、綿棒の先、イヤホンのイヤーピース、昆虫などがあります。鼻の異物は小児の場合が多く、おもちゃなどに限らず、鼻の穴に入るものなら何でも多種多様です。耳の場合には大きな問題は起こりにくいのですが、鼻の場合は放っておくと鼻炎を起こして臭いはなが出るようになります。のどの異物で圧倒的に多いのが魚の骨です。緊急性は無い場合が多いのですが、異物を放っておくと重症の炎症を起こす場合がありますので早めの摘出をおすすめします。また、部分入れ歯や薬のシートなどの誤飲もあります。食道異物気管支異物については別項で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

自己免疫疾患

 自己免疫(じこめんえき)疾患とは、本来異物を認識し排除するために体に備わっている免疫系が、自分自身の正常な組織まで異物と認識し、攻撃を加えることで起こる病気の総称です。全身に広く影響が及ぶ場合と、ある特定の臓器だけが侵される場合があります。耳鼻咽喉科・頭頸部外科の領域に症状や所見が出ることで自己免疫疾患が見つかることもあります。
 唾液や涙の分泌が低下して乾燥感を訴えるシェーグレン症候群、鼻を中心に粘膜や軟骨などが侵される多発血管炎性肉芽腫症(たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう)(granulomatosis with polyangiitis:GPA 旧名ウェゲナー肉芽腫症)、口内炎が多発するベーチェット病などは全身性の自己免疫疾患ですが、耳鼻咽喉科・頭頸部外科で見つかることがよくあります。特定の臓器に限局する自己免疫疾患の中で、甲状腺の機能が亢進するバセドウ病や、逆に低下傾向を示す橋本病(慢性甲状腺炎)などの甲状腺疾患は耳鼻咽喉科・頭頸部外科の守備範囲の一つです。また、進行性の難聴の原因として内耳自己免疫病が知られています。
 自己免疫疾患の治療法は病気の種類、重症度によりさまざまです。軽症の場合は経過を観察するだけの場合もありますが、病気の進行度によってはステロイド、免疫抑制剤などで免疫系全体を抑え込んだり、生物学的製剤といわれる生体が作る物質を薬物として使用する薬が使われたりすることもあります。必要に応じて内科と連携を取って治療が行われます。

Last update: 2023年1月25日
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