機能性難聴
小学4年生のりく君は学校健診の聴力検査で「聞こえない音があり難聴の疑いがある」との結果のため、耳鼻咽喉科を受診するように言われました。まわりの人は気がつきませんでしたが、本人は友達の声がよく聞こえないことがあると言っています。耳鼻咽喉科で詳しい検査を受けたところ、「機能性難聴」と診断されました。
- Q1.機能性難聴とはどのような難聴ですか?
- 耳には原因となる病気がないのに、聴力検査では難聴の結果となっているものです。学校健診で見つかることが多く、大半は自覚症状がなく日常生活でも支障はみられません。発症の背景に心因的要因が関係しており「心因性難聴」と診断されることもあります。男児より女児に多く、8~10歳前後に多くみられます。多くの場合は両側性の難聴ですが、突然片耳が聞こえなくなったと訴え突発性難聴と間違えられることもあります。
- Q2.機能性難聴はどのように診断されるのですか?
- 聴力検査の結果と会話での聞き取りの状態が違うことから疑います。通常の聴力検査と他覚的聴力検査(聴性脳幹反応〈ABR検査〉など)等から診断します。発症の原因となるストレスについても確認し、必要と考えられる場合は心理検査や発達検査を行います。
- Q3.原因は何が考えられるのでしょうか?
- 子どもをとりまく環境からくるストレスと、子ども自身の性格との関係で難聴がおこると考えられます。学習、友人関係、転校やいじめなど学校生活にかかわる問題や両親の離婚、親子関係、兄弟関係など家庭に関する問題等が原因となります。問題が複雑にからみあっている場合も多く、原因を把握できない場合も3割くらいあります。大半の子どもは環境に適応できますが、一部の子どもは適応に時間がかかったり、適応できにくいために症状がでるのではないかと考えられています。
- Q4.機能性難聴の治療はどのようにするのですか?
- 本人や家族に「難聴をおこす耳の病気はなく普通に聞こえていること」、薬による治療などは必要ないことを伝えて、安心してもらうことが重要です。改善がみられない場合は、児童精神科や小児神経科で治療やカウンセリングを行うこともあります。心因性難聴はこころの葛藤や悩みをもった子どもたちの‘SOS’ととらえ、学校とも連携をはかりながら問題解決につとめていきます。なお、過度の原因の追及はかえってマイナスに作用することがあるので注意してください。治る子どもたちの約半数は6か月以内で治ります。
Last update: 2023年1月10日